遠くて近きもの 極楽。舟の道。人の仲。
清少納言
「春はあけぼの」ではじまる『枕草子』の第161段「遠くて近きもの」である。
さらりと短い言葉で核心をつくのは、さすが清少納言。
遠いものと思っていても、意外に近いのが、死の世界、舟の道中、人の間柄だという。
このときの「舟の道中」は時間的観念を意味し、「人の間柄」は男女の仲を指す。
宇宙的視点から見れば、人間の一生など、まばたきのごとく一瞬にして消えてしまうものかもしれない。
しかし、その一瞬に悲喜こもごもの出来事が無数に存在し、何十億通りの物語がある。
どんな物語を紡ぐのかは人それぞれ。
まばたきをしたあとの世界に自分がいないとしても、すばらしい芸術や文化が守られ、自然豊かな美しい地球の歴史がつづくことを願うばかりだ。
(151111第137回)