毎日自分に言い聞かせなさい。 今日が人生最後の日だと。 あるとは期待していなかった時間が驚きとして訪れるでしょう。
ホラティウス
「今日が人生最後の日だと思え」。
無数の人や書物が連綿と語り継いできた言葉だ。当然そのあとには「だから頑張れ」とか「君ならどうする」とか「悔いの無いように精一杯生きよ」とかいう啓蒙の台詞が続くわけである。
だから聞き飽きた、というのではもちろんないが、ここで古代ローマの詩人ホラティウスの格言を引用したかったわけは、最後の一文にこそある。
期待していなかった驚きの時間、それがすべての人に訪れるとは、ホラティウスは説いていない。
人生最後の日だと思って、自暴自棄になる。
人生最後の日だから、その日限りの享楽に身を委ねる。
本当に人生最後の日が訪れたとき、そういう態度を示してしまうような人間のもとに、驚きの時間は決して訪れない。
人生最後の日だからこそ、人間として誠実に一日を生きる。その行動の結果を知ることが、たとえ不可能であっても。
そういう覚悟をもって誠実な毎日を積み重ねていく人間のもとにだけ、「驚きの時間」が黄金の翼に乗ってやってくるのだ。
(130319第67回)