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Interview Blog Vol.90

人も自然もともに豊かに育つ場所をつくりたい。

株式会社ニキシモ 代表取締役社長北山実優さん

2019.12.10

 

国内有数のリゾートホテル「二期倶楽部」を創設した北山ひとみさんを母親にもつ北山実優さん。現在は二期倶楽部に隣接する「アートビオトープ那須」のプロジェクトを手掛けています。

母親譲りの〝リベラルアーツ感覚〟を駆使し、多方面に新しい風を吹き込む実優さんの仕事観、人生観とは?

 

共に学び共に生きる「アートビオトープ那須」

社名の「ニキシモ」というのは、どういう意味ですか。

「ニキ」は二期倶楽部の二期で、「シモ」はピアニッシモの「シモ」。小さくてもピカリと光るという想いを込めて「ニキシモ」は「ニキ」とラテン語をルーツにした最上という意味のイシモを合わせた造語です。「とっても二期」ですね(笑)。

「二期倶楽部」という名前は、「一期一会」という言葉から生まれました。一度だけではなく、二度、三度と、何度も訪れていただける、ゲストにとっての第2の故郷になればとの思いが込められています。

 アートビオトープも新しい時代に向けて二期のエッセンスを大切に、真のリゾートとは何かと考え続け、これまでの二期のチームで磨き、深めていきたいと思っています。

「アートビオトープ那須」はどんどん進化していますね。

 アートビオトープは2006年、二期倶楽部の20周年を記念した文化事業としてスタートしたものです。陶芸とガラススタジオを併設した施設を私たちは、アートレジデンスと呼んでいます。これまで板橋廣美、三輪和彦、小池祥子、中村錦平、中村卓夫、新里明士、川端健太郎など、日本を代表する現代工芸家を招聘し、時に地域の子供たちを交えながら定期的にワークショップを開催するほか、若手作家支援活動としてアーティスト・イン・レジデンス活動も行ってきました。そして現在は、このブランドの延長に一部上場会社タカラレーベン社と新たなプロジェクトに共同で取り組んでいます。来年7月には15棟のスイートヴィラとレストランが新設されます。

今年10月、「ボタニカルガーデン アートビオトープ『水庭』」のイベントがありましたね。

 はい。2019年「山のシューレ」の関連企画です。 「山のシューレ」は、2008年に立ち上げたオープンカレッジです。多様な人々が、数日間寝食をともにし、自然の中で学びを通じて豊かな時間を過ごすことを目指したものです。

「自然の叡智から人の叡智へ」という大きなテーマの下に人と世界の関係をあらゆる角度から考察してきました。その成果として誕生したのが実は「水庭」です。この「水庭」は、公園でも単なるランドアートでもありません。〝内省の場〟となることを目指しています。10月5日に開催したのは、新月の日にこの水庭を初めて舞台にしたナイトイベントです。陶芸家・現代美術作家の近藤高弘さんによる、宮城県の大蔵山で産出される伊達冠石と大蔵寂土を使った陶芸作品48点を水庭の池の中に設置し、その中で火を焚きました。炎に照らされた幽玄な水庭の空間のなかで、能楽師・安田登さんとダンサーのエメ・スズキさんらに天地創造をテーマに古事記と聖書に取材した舞を演じていただきました。

社会に貢献したい

お母さまの北山ひとみさんは、国内でも屈指のリゾートホテルをつくられた方ですし、やはりご両親の影響は大きかったと思います。いずれは自分もリゾート事業を手がけたいという思いはあったのでしょうか。

 まったくなかったですね。本当は医者になりたかったんです。結局大学では教育学部に進みました。混沌と悩みましたが、学芸大学は、豊かな自然に恵まれた環境です。教育実習で子供たちと触れ合ったとき、教育はすごく大事だと思いました。学ぶことの本質、生命から社会の成り立ちや文化までその“功罪”も含めて、教育についていろいろと考えました。

 そして従来の教育制度の中というよりは、もっと小さな実践の場所を作ることで、社会に貢献することができないか、と考えました。

社会的意識が高かったのですね。

 うちはとにかく議論は多い家庭でしたから、私も社会のことを考える習慣がついたのかもしれません。そういうことを考えることが好きなんですよね。

大学時代の混沌とした状況からどうやって抜け出したのですか。

 卒業後に留学を前提に通った学校での体験は忘れられません。年齢もバックグラウンドも異なる人たちが、それぞれの目的や目標を持ちながらも、創造的にかかわり合い、学びあう場でした。下は中学生、上は60代の方が同じ場で、一緒に学びます。海外におけるユニークな教育もさまざまありますが、この小さな実践の場に出会ったのは衝撃的でした。

「多様な学びの空間」が、カタルシス、人間の精神の「浄化」に大切だと実感しました。人間として限りない学びから心開かれたattitudeを常に更新することができるのです。

人と人の関わりから学ぶということですね。

 そうです。アートビオトープ那須も、訪れる方々の感性や知性が刺激し合えるような場所にしたいと思っています。さまざまな人がこの地で、新たな“己”に出会い、日々を豊かに生きるヒントを得られるような場にできたらいいですよね。

 ゲストの方々だけでなく、働くスタッフも「ここで働くことで人生が豊かになった」と思えるような場所にしたいと思っています。職場はスクールでもあると思っています。

母「北山ひとみ」の背中

二期倶楽部を継ぐというお考えはなかったとのことですが、お母様についてはずっと意識されていたと思います。

 そうですね。仕事に対する姿勢や、考える方向性が母とかなり重なっています。

たとえば、どういうところが似ていると思いますか。

 クオリティに対するこだわりもそうですが、本当に自分にとって社会にとって良いものかどうか、ということを常に常に考えて行動しています。数字のことも大切かもしれませんが、目的をはきちがえては、意味がない、と思っているところですね。

北山ひとみさんはきわめて美意識が高くて、やりたいこととそうでないことがはっきりしていると映ります。大衆に迎合していないというか……。

 そうですね。「美」が基準です。流行っているとか、売れるということに判断基準はありません。私もそこは変わりません。何に価値を置き、育てるか、というのは人それぞれ異なって良いと思いますが、文化的なものを作り出す意志力は重要ですよね。

「册」から知の森へ

千鳥ヶ淵にあるカフェ、「册」は良書とアート作品が一体となっている空間で大好きな場所ですね。

 ありがとうございます。母の友人である内藤廣先生の空間です。16年経ちました。「册」は、アートビオトープ那須にとっての入り口でもあり「窓」のような場所です。「本棚の向こうには森があった」という方針で、ビオトープへの玄関口として、さらにアクティベイトしたいなと思っています。

森へ誘うために、「册」でなにか仕掛けようということですか。

 毎年開催していたサマーオープンカレッジ「山のシューレ」をもとに、ここ册を活用し、小さな勉強会やセミナーなどを開催していきたいと思っています。

アートビオトープの未来

これまでお話をお聞きしていると、医者と重なる部分もありますね。

 そうですよね。私もそう思えるようになりました(笑)。本来、ホスピス、ホスピタリティは親和性がありますね。

 今後は柔軟で新しい感性の若い人たちが活躍できる場も積極的につくっていきたいと思います。

 2011年の東日本大震災後、自然災害も多く、経済や社会環境も大きな転換期に立たされていますね。これからはさらに生きる上で「学び」が大きなファクターになると思います。問い続け、学び続けること。正解は誰もわからない。あとは、感動。感動はすごく大切です。感動を生み出していくようなそんな場所にしたいです。そのためには日々、心と手を磨いていかなければいけません。二期のスピリッツの一つに、「手技」があります。

それにしても水庭の発想は大胆ですね。訪れた人は感動すると思います。

 完成まで4年間かかりました。デザインは建築家の石上純也さんに依頼しました。構想に1年、それからは大きな樹を毎日3〜4本、少しずつ移植しました。ふつう、移植する際は根巻きをして移動させるようですが、この水庭の行程では、根を丁寧に掘り起こし、立木で移植しました。根を大切にすると樹も死なないのですね。配置も、すべて設計図にしたがって数十センチとずれることなく植えられました。そして樹々の間に配されている160の池を、川から引いた水が廻り、川へと戻っていきます。

 この地にある樹々や水、苔や石を使い、再編集し、構成されて生み出された庭=匠です。

 自然の中にいるだけでパワーをもらえますし、自然の中に身を置くと誰でも心が解かれていく……、そんな体験をします。21世紀、人間は、自然を母体に生き、生かされてきたことを真摯に思い出さないといけないと感じています。

 そういう場として、アートビオトープの思想を深めていくことが、私のミッションだと思っています。

 

アートビオトープ那須

https://www.artbiotop.jp/

 

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