人の数だけ物語がある。
HOME > Chinoma > インタビューブログ【人の数だけ物語がある。】 > ギターに魅せられ、ギターと共に歩む。こんなに楽しいことはありません。

ADVERTISING

私たちについて
紺碧の将
Interview Blog vol.81

ギターに魅せられ、ギターと共に歩む。こんなに楽しいことはありません。

ギターショップ オールドブリッジ古橋淳さん

2019.07.25

 

クラシックモデルを中心にヴィンテージ・中古・新品のギター販売と買取・楽器の修理をおこなっているギターショップ「オールドブリッジ」。アットホームな雰囲気と丁寧な対応が人気のこのお店では、愛猫「みかん」ちゃんも招き猫として店番中です。オーナーの古橋さんはもともとミュージシャン。スカウトされたバンドは事務所に所属し、CDデビューやツアーをするほどでした。ギターショップを開くまでに歩んできた道のりとはどのようなものだったのでしょうか。

オールドブリッジの特徴

ギターショップも個性があると思いますが、オールドブリッジの特長はどんなところにありますか。

 猫(みかん)がいることですね(笑)。お店のテーマが“暖かさ”で、そういう雰囲気作りに一役かっていますし、みかんのファンも多いです。ご夫婦で来られると、旦那さんがギターを弾いてる間に奥さんはみかんと遊んでいるんです。

 お店をオープンして1年たった頃に飼い始めて、それから不思議とお店の経営も順調になってきました。まさに招き猫ですね。ロゴマークのモデルにもなっちゃいました(笑)。

お店のルールや、こだわっていることは何かありますか。

 実際にギターを持っていただくことですね。ウチではお客様に合ったセットアップをしますから。もちろん強制ではありません。通信販売もしていますが、それでも半分以上のお客様には来店いただいています。

 指先って繊細で敏感で、弦の高さのバランスはコンマ何ミリの世界でシビアになってきます。高い方がいいと言う人もいれば、なるべく下げてくれっていう人もいます。弦の太さも話をした上で決めるなど、お客様とのコミュニケーションを密にしています。県外や海外から来られる方も多いんですよ。

 修理に関しても、誰がどういう修理をしたのかをお客様に明確にしています。売ったあとのケアもしっかりとしたいですからね。ギターは消耗品のパーツがたくさんあり、直しながら長く使っていくものなんです。なるべく質問に答えたいし、悩みも解決してあげたいと思っています。ギターという共通の趣味を通して、コミュニケーションをとりながらお互い楽しくやっていきたいですね。

レアなギターを取り扱っていると、ギターを弾かない方、いわゆるコレクターのお客様の来店もありそうですね。

 ギターって見ているだけでも楽しいから、そういう人の気持ちもよくわかるんです。飾って眺めながらお酒を飲む人もかなり多いんじゃないかな。パーツ一つで語れるようなディープな世界ですからね(笑)。メーカーにも歴史がありますから、そのギターのバックグランドを知れば知るほど面白くなるものなんですよ。

独立から経営が安定するまで

ギターショップを開くことは昔からの夢や目標でしたか。

 昔からギターファンで、買ったり売ったりをしていましたけど、ショップを開くことが目標ということはありませんでした。高校卒業後は、デザインの専門学校を卒業して、バンド活動をしながら東京の会社で働いていました。バンドも順調で、事務所に所属してCDも出しましたけど、プロとしてやっていくかどうかの「人生の岐路」に立った時、いろいろと見えてきたことがあって……。その道を諦めたとき、次は自分の力で100%できることをしようと思い、何かお店をやりたいと思いました。

何か、ということはそこでギターショップに決めたわけではなかったと。

 他にiPhoneの修理という選択肢もあったんですよ。その2択だったんです。どちらにしようと考えたとき、ギターショップの方が鮮明なイメージが湧きました。昔から多くの楽器屋に行きましたが、もっとこうだったらいいのにとか、客視点でのリクエストも心の中にはありましたし、自分だったらこうやりたい、それを形にしてみたいという思いがあったからでしょうね。5年後10年後、先のことまでプランニングして、イメージが鮮明な方を選んだ結果、ギターショップに決めたんです。

オープン前に不安などありませんでしたか。

 自分よりも周りが心配していました(笑)。僕はオープンすればバンバン売れると思い、楽観的に考えていました。でも現実はほとんど売れなくて、一週間たっても売れたのは弦が2セットだけ。それが一ヶ月になり、二ヶ月になり……。次第に違うことを始めた方がいいんじゃないかと考えるようになり、食品衛生責任者の資格は持っていたので飲食店でも始めようかな、なんて。短絡的にそっちの方向へ進んでいたとしても失敗していたでしょうけどね。

1年ほどたち愛猫のみかんちゃんが来てからだんだんと経営が順調になってきたとお聞きしましたが、何か大きなきっかけ、転機のようなものがあったのですか。

 特に大きなきっかけがあったわけではありません。途中迷いもありましたが、続けているうちにぽつぽつとギターが売れ始め、その中でいろいろなお客様と知り合えて、たくさんのギターを見せていただき、応援してくれる仲間が増えて、それでお店の方向性が徐々に定まってきたという感じです。経営が安定しはじめたのは1年半たった頃からですね。

口コミでお店の評判が広がったということですね。

 広告も出してませんから、口コミのみですね。「あそこにギターショップができたんだよ」とか「修理出したらいい対応をしてくれたよ」とか、紹介をしてくれるお客様が増えたんです。ありがたいことですね。

丁寧にセットアップをしたり、お客様とギターや音楽の話をしたり、お店のテーマである“暖かさ”に共感する人が増えたんでしょうね。

 一番大切なことはお客様としっかり向き合って真摯に対応することです。コミュニケーションを大事にしたいと思っていました。お客様の立場にたって、しっかりお話を聞いた上で案内をしないといけませんからね。そういう意味でも、やはりご購入前に一回は来店していただいて、実際にギターを握ってもらう過程は大切なんです。通信販売でそういう過程を踏まないとき、極稀にですが「なんか思ってたのと違った」って言われることがあります。高額な商品ですから、納得の上で購入していただきたいですからね。

ギターとの出会い、魅力

ギターに興味を持ったのはいつぐらいからでしたか。

 中学生のとき、家にあった使われていないクラシックギターをたまたま触って、面白いなって思いました。そのうちエレキギターが欲しくなりましたが、中学生にはなかなか手が届かない。一年くらいお小遣いを貯めて買ったんです。5万円くらいだったかな。とんでもないものを買ってしまったと思いましたよ。ギターを持って鏡の前に立って、胸が張り裂けそうな、なんとも甘酸っぱい気持ちを今も鮮明に覚えています。

その頃はどんな音楽を聞いていましたか。

 音楽は小学生の頃から好きで、最初に買ったCDがザ・タイマーズだったのを覚えています。母親も音楽が好きで、家にはレコードがたくさんありました。当時から60年、70年代に活躍したレジェンドミュージシャンが好きでビートルズとか日本だと、はっぴいえんどとか数え切れないほどいますね。

古橋さんの思うギターの魅力とはどんなところにありますか。

 同じギターでも、人によって見える世界が違うんですよ。プレイヤーなら相棒だし、コレクターなら宝物です。ギターを購入するということは、それこそ結婚するようなものというか……。布団で一緒に寝てると言う人もいましたよ(笑)。ギターに命が宿っているように感じるんです。人を引きつける魅力があるんですよね。

 このお店を始めてからどんどんギターが好きになっています。仕事が終わって、12時くらいにお酒を飲みながら好きなギターをネットで探すのが至福の時間です。もう仕事とか関係なく、常にギターが生活にあるという感じですね。

初めての挫折、大きな決断、人生の岐路

古橋さんはミュージシャンとして活躍された時期も長いですよね。バンド活動についてのお話をお聞かせください。

 初めてバンドを組んだのは高校生のとき。当時はブランキー・ジェット・シティとか、ニルヴァーナとか、他にもいいバンドがたくさんあった時代でした。

 高校卒業後も専門学校に行きながらバンド活動を続けていました。けっこう人気が出て、東京のライブハウスで事務所にスカウトされ、インディーズのレーベルでCDを出して、ツアーもやっていたんですよ。

 ミュージシャンとして自分の作曲でCDを出すことが夢でしたが、トントン拍子にそこまで進んで20歳でその夢が叶ってしまいました。

CDデビューやツアー、まさに順風満帆です。

 ただ、不思議なことに、バンドって調子が良くなると代わりに悪くなる部分も出てくるんです。CDデビューが目標っていうバンドも多いと思います。でも、実はそこが本当のスタートラインであって、ゴールではないんです。大変なのはそこからですから。

 目先のことだけを頑張って、ポンポンとそこまで行ってしまった。じゃあこれから先、バンドをどうしていくべきかというビジョンがなかったんだと思います。若かったんでしょうね。バンドを上手にマネージメントできなかった。だんだんと歪みが生じて、バンドもうまくいかなくなりました。

ほんとうの意味で“プロ”としてやっていくことは難しかったんですね。

 もちろん好きなことだからこれを仕事にできるならしたかったです。会社員になってからも仕事と平行して30歳まではバンド活動をしていました。ミュージシャンとして思い描いていた部分は大きかったですが、最後には挫折しました。それが初めての挫折でした。

 事務所としては、とにかくCDを売ってお金を儲けたい。そうなるとバンドはやりたい音楽活動だけをやっていればいいというわけにはいきません。やりたくないこともやらなくてはいけなかったり、やりたいことがあるなら成功してからやれと言われます。楽しくないと音楽活動は続かないと思っていたこともあり、プライドを捨てきれなかったんです。そういうところでチャンスを逃してきました。それに自分たちの音楽を売り込む力、ブランドをしっかりとPRできる力もありませんでした。やはり努力と才能と器用さ、そこにタイミングとか、そういうさまざまな要素が噛み合ってアーティストって大成するんだなって思いました。

グレッチ夢をあきらめる決断は活動歴も長い分、たいへん辛い決断だったと思います。

 このままズルズルと続けるか、違う道を行くのか。この決断が大きな転機でしたね。もちろん未練もありました。けど、結局は辞める勇気があるかないか、なんです。音楽で生きていくことをあきらめた人は、その勇気を持ったときが一番辛いんじゃないかな。もちろん、何かがきっかけで曲が大ヒットする可能性だってありますから、やってみないとわからないこともあります。だけどその可能性にどこまで賭けるかっていう線引ですよね。物事はなんでもそうだと思うんですけど、客観的に見れば、自然と自分のレベルが見えてきますから、それを冷静にどこまで受け止められるかだと思うんです。

バンド活動の経験が今も活きていると感じることはありますか。

 お客様のリクエストを理解する力はプレイヤーとしての経験があるからこそだと思います。実際のライブで起こるトラブルなど、実戦を考えたアドバイスができます。ショップの定員としての目線プラス、プレイヤーとしての目線でお話することができますから、幅広いアドバイスが可能ですよ。

ミュージシャンであり続けたいという気持ち

古橋さん自身の生き方や考え方のこだわりなどはありますか。

 直感を信じているんです。ただ、ピンと来たからすぐ行動するのではなくて、じっくりと考えてから行動するんです。勢いにまかせないで、一旦慎重になる。必ず先のことまでイメージしてから実行に移します。モヤモヤしたまま始めたことって結局うまくいかないんですよね。

 あとは自分でやれることは自分でやらないと気がすまないところですかね。納得するためには自分自身じゃないとダメというか。ホームページやブログの商品紹介の写真はめちゃくちゃこだわっているんですよ。ギターってそれぞれカッコよく見える角度がありますから、そこにトコトンこだわったり。自分で写真を撮って画像を編集して、やっぱり撮り直そうとか、結構やってます(笑)。

やりがいや苦労などは感じますか。

 お客様がギターの感想を言ってくれたり、お店のリピーターになってくれて、ギターや音楽の話をしに来てくれるとほんとうに嬉しいです。お客様のリアクションを何らかの形でもらえるとやりがいを感じますね。

 逆に苦労することはあまりなくて、自然体でいられるのでいい仕事だなと思います。

これからの目標はありますか。

 お店に関してはこれからも変わらずに、このままのコンセプトでやっていきたいと思っています。

 僕個人としては、やはり自分の中にプレイヤーの気持ちが生きていますから、今でもミュージシャンであり続けたい、音楽活動を積極的にやりたい気持ちがあるんです。今はネット環境も昔とは変わり、多様に表現ができる時代ですし、ここ最近ライブにもちょこちょこと出ています。あまりのめり込んでしまうと、お店の営業に支障をきたしてしまいますから、そのへんは気をつけないといけませんね(笑)。

Information

【ギターショップ オールドブリッジ】

〒321-0968 栃木県宇都宮市今泉1-21-13

営業時間 12:00〜20:00

定休日:月曜日・第3日曜日 TEL.028-612-5209

HP:http://www.oldbridge.jp

mail:info@oldbridge.jp

 

【記事一覧に戻る】

ADVERTISING

メンターとしての中国古典(電子書籍)

Recommend Contents

このページのトップへ