人の数だけ物語がある。
HOME > Chinoma > インタビューブログ【人の数だけ物語がある。】 > 子供の頃から、父のように仕事をしたいと思い 21歳で起業。かっこいい女性を増やしていきたい。

ADVERTISING

紺碧の将
Interview Blog Vol.122

子供の頃から、父のように仕事をしたいと思い 21歳で起業。かっこいい女性を増やしていきたい。

Vinaka 代表笹井美耶さん

2021.11.12

 

京都河原町の一等地でエステサロン「Vinaka」を営まれている笹井さん。エステサロンは、開業後3年以内に約90%が廃業に追い込まれるという厳しい世界です。また昨今のコロナ禍により、2019年度の理美容業界の倒産件数は過去最多を更新しました。「Vinaka」は2021年11月現在で起業して約5年が経ちましたが、廃業に追い込まれるどころかリピーターのお客さんは増え続けています。経営者として、また一施術者として活躍されている笹井さんにお話しを伺いました。

高校時代、エステサロン起業を志す

小さい頃からエステに興味を持っていたのですか。

笹井 高校生の時に通っていた小顔矯正のエステサロンがきっかけで興味を持ちました。そこで施術をしてくれたエステティシャンのお姉さんみたいになりたいと思ったんです。

高校生の頃は自分の容姿に敏感になる時期ですね。

笹井 当時、居酒屋のキャッチのアルバイトをしていたのですが、稼いだお金はほぼ美容代に使っていました。また、私は元々アトピー肌で化粧品の成分や肌に触れるものは人一倍気をつけています。自分が興味を持ったことに対してはとことんのめり込む。オタク気質なんです(笑)。

またハードなアルバイトをしていましたね(笑)

笹井 実は私、子供の頃から人見知りで引っ込み思案だったんです。キャッチのアルバイトを選んだのが不思議ですよね。

そのようなアルバイトに抵抗はなかったのですか。

笹井 まったくなかったわけではないですが、同じことを繰り返ししていることが苦手で。それなら外で自由に動けて、いろいろな方と接することができる仕事にしようと。いくつかアルバイトを経験しましたが、一番自分に合っていたのはキャッチのアルバイトでした(笑)。

どういったところが合っていたのでしょうか。

笹井 お客さんを呼び込めないとお給料はもらえなかったんです。時給制ではなく完全歩合制でしたから。でも自分の工夫次第で稼ごうと思えば稼げる、そんなところが合っていたのかなと思います。お客さんに警戒されないようなファーストアプローチの仕方など、高校生ながらに考えて働いていました。

どこかのエステサロンで働くのではなく、起業しようと思ったきっかけはありますか。

笹井 父が造園業の経営をしているのですが、大変ながらもかっこよく仕事をしている父の姿を見ていて、自分も将来父のように仕事をしたいと思っていました。高校卒業後はすぐにでも起業しようと思っていたんです。うまくはいきませんでしたが……。

美容の専門学校へは進学されていないんですか。

笹井 行っていないです。自分で調べてここで修業したいと思ったサロンに「働かせてください」とお願いしてみたもののすべて断られて…。知識もなく、社会人経験もない高校生からお願いされても厳しいですよね(笑)。

それからどのような経緯で起業に至ったんでしょうか。

笹井 21歳で起業したのですが、卒業してからの2年間はフィジーと宮古島に行っていました。今はわからないですが、当時は20歳を過ぎないとエステのスクールに通えなかったんです。20歳になってすぐにそのスクールに通いお店をオープンしましたが、それまでは自由奔放な生活をしていました。

南国がお好きなんですね。

笹井 父に幼い頃からよくバリ島に連れて行ってもらった影響で、海と南国が大好きなんです。

フィジーを選んだ理由はなんですか。

笹井 正直、特別な理由はありません。たまたま父が、テレビでフィジー留学の番組をみたことがきっかけです。本当は進路も就職先も決まらず悩んでいた時に、卒業後は宮古島に住みながら考えようかなと思っていたんです。でも父から「宮古島にはいつでも行けるだろ」と言われフィジーに行きました。英語もまったくできなかったのですが、行ってみたらなんとかなるものですね(笑)。結局は宮古島も諦めきれず、フィジーから帰国後宮古島に住んだのですが。フィジー留学は、日本では考えられないような不便な生活でしたが、人生経験としてすごく良かったです。

起業してから

起業するにあたって、施術用の機械を導入したり店舗を借りたり準備も大変だったと思います。

笹井 小顔矯正の施術はオイルがあればできたので、施術用の機械を導入する必要はありませんでした。店舗を探していたときに、高校生の時から通い続けていたエステサロンが移転すると聞いてすぐにその店舗を契約したのですが、お金がなくて……。父に相談したら、自分で銀行に行って借りてこいと。

無事お店をオープンしたということは借りられたのですか。

笹井 いえ、審査は通らず借りられませんでした。今思えば社会的信用もないし当たり前なんですが(笑)。ただ当時は、通ると信じていたんですよね。ビジョンも明確でしたし、それまでの壁もなんだかんだで乗り越えてきましたから。その時ばかりは自分ではどうしようも出来ず、もう一度父にお願いしました。やれることはすべてやった上での頼みであればいいよ、ということでお金を貸してもらい無事お店をオープンすることができました。 

考えてから動くのではなく、動いてからできる方法を考える性格ですか。

笹井 始める前からいらない心配事をして一歩踏み出せなくなるのであれば、「今だ!」と思った時に即行動するようにしています。行動してしまえば、出来る方法を考えるだけですし。

Vinakaの意味はなんでしょうか。

笹井 Vinakaはフィジー語でありがとうという意味です。「ありがとう」と言ってもらえるような仕事をしていきたいと思いました。

お店をオープンされてからの集客はどのようにされていたのですか。

笹井 お店の前に看板を置いてチラシをさしたり、ブログを書いたり、「ホットペッパー」に広告を掲載してもらったり……。サロンに勤めた経験がなかったので常連のお客さんがいるわけでもなく、だからといって最初から友達に頼りたくもありませんでした。変なプライドがあったんです(笑)。

初めてお客さんが来てくれた時のことは覚えていますか。

笹井 もちろんです、美容大学生でした。凄く嬉しかった反面、緊張でガチガチでした(笑)

エステの経営が厳しいと言われるのは、一回きりのお客さんが多いからですよね。実は、私もVinakaのリピーターの1人ですが、いつもリピーターのお客さんで予約がいっぱいという印象です。

笹井 今はありがたいことにリピーターのお客さんも増えてきましたが、始めた当初は、店舗を構えただけでお客さんは来てくれて、その後も継続して通ってくれるとばかり思っていました。リピート対策を何もしていなかったんです。

それからどのような対策をされたのですか。

笹井 新規のお客さんに対しては、来店後3日以内にはお手紙を出しています。どの仕事でも共通していると思いますが、この仕事も技術職とは言え、結局は人と人なんだと思いました。身近な人には話せないことも、意外とサロンの人には相談できることもあると思うんです。Vinakaがお客さんにとって、精神的にも安らぎの場になってほしいと思っています。

悩んでいたことを人に聞いてもらうだけでスッキリすることはよくあります。お客さんと話した内容をきちんと覚えておくのも重要になってきますね。

笹井 私は、カルテに頼らないようにしています。施術時間はそのお客さんと真剣に向き合い、話したことは全部頭に入れるようにしています。昨年(2020年)の11月に店舗拡大のため、現在の店舗に移転しスタッフも採用しましたが、カルテはお客さんの肌悩みなどの情報をスタッフに共有するときしか使いません。

私が通い始めた当初は店舗移転の前でしたから、急拡大でびっくりしています。

笹井 実は今働いているスタッフのひとりは元々お客さんでした。いろいろ話しているうちに自分と似てると思う部分があったんです。ちょうど仕事を探していると聞いたので「一緒に働いてみる?」と咄嗟に声をかけてしまいました(笑)。それからは追加でスタッフを募集したり、前の店舗でネイルサロンを立ち上げたりと怒涛の毎日でした。今では、私含めて7人のスタッフがいます。

 

スタッフは第二の家族

Vinakaは、皆さん仲が良さそうですね。

笹井 はい、皆個性が強いですが(笑)。仕事の一環で月に1回、ランチミーティングをするのですが、その時はお客さんの話ばかりしています。お客さんから話してもらった肌悩みなどはスタッフ全員で共有して、みんなで意見を出し合いながら知識を高めていく大切な時間です。「Vinakaに来てよかった」とか「綺麗になって嬉しい」と思ってもらえるように、スタッフ全員でお客さんに向き合っています。

目先の利益ではなく、お客さんやスタッフさんのことを第一に考えることが大切とわかっていても、出来ない経営者がたくさんいます。

笹井 私は会社に勤めた経験もなければ誰かに教えてもらったという経験も少ないですが、父から受けた教えはたくさんあります。店舗拡大した時も、「上手くいかない原因はすべて自分にあると思え」「スタッフに何かしてもらうのではなく、まずは自分からしてあげろ」と。最初は正直、上手くいかなかった時にはひとりに戻って一からやろうと思っていましたが、今では働いてくれているスタッフのためにもVinakaを大事にしていかないと、とより責任を持てるようになりました。

以前、私の施術を担当してくれたスタッフの方から、笹井さんはプライベートは優しいですが、仕事の時は鬼ですと聞きました(笑)。厳しく指導するのもエネルギーがいると思います。

笹井 技術面も接客も口うるさく、出来るまで何度も伝えます。万全の状態で施術に臨んでも、わからないことは出てきます。だからこそ、みんなで共有する場を設けるのはとても大事な時間ですし、スタッフが施術中に困ったことがあればすぐにサポートできるよう、常にアンテナを張っています。

エステは入りにくいとか勧誘が多そうというイメージをもつ方が多いと思いますが、Vinakaにはそういった雰囲気がありませんね。

笹井 入りにくい理由のひとつに、きっちりと化粧をしていることがあると思うんです。親近感を持ってもらうためにも、Vinakaはスタッフ全員ノーメイクにしています。着飾る必要はないんです。でもだらしなく見えないように、日々のスキンケア、体型管理や食事管理は徹底しています。お客さんも、実際に働いているスタッフの肌を見ることで、ここのサロンに任せてもいいかどうか、判断できますし。

エステは継続して通わないとほとんど効果がないようなものが多いと思いますが、コースメニューもないですね。

笹井 コースメニューはひとつだけあるのですが、お客さんのご要望で作ったものです。コースは最初に頂く料金も高いですし、何より途中でやめたくてもやめられない。最近は「他のエステに行きましたが結局Vinakaに戻ってきました」と言ってくれるお客さんも多くなりました。比較してからやっぱりVinakaがいいと思ってもらえるのはとてもありがたいことです。

先程ネイルサロンも立ち上げたとおっしゃっていましたが、ネイルも勉強されたのですか。

笹井 いえ、ネイルの知識はありません。施術に入ることはないですが、接客はします。

接客のためだけに2店舗間を行き来したりしているんですね。

笹井 はい。言葉で伝えるよりも実際に私が接客をしているところを見てもらうようにしていて、まずは言葉の言い回しとか姿勢、お客さんと接しているときの振る舞いを真似てもらうようにしています。あとは、何よりみんな妹のように可愛くて……。私は三姉妹の長女で育ってきましたから、年下の子たちが成長していく姿を見るのは楽しみのひとつでもあります。エステサロンのスタッフからは、自分たちを見る目と全然違うとよくいわれます(笑)。

笹井さんのような上司に恵まれた方は、得られるものがたくさんありますね。

笹井 教える立場ではありますが、逆に教えてもらうことの方が多いです。私が見本になれるよう、より丁寧な接客を心がけたり、仕事に対する考え方も改めて考えさせられる機会がたくさんあります。

例えばどんなことですか。

笹井 一番は初心を忘れず、お客さんがいることに感謝すること。あとは考え方の転換です。例えば悪い口コミは誰でも見たくありませんが、自分を見直すきっかけを与えてもらったと思うようにしています。接客でクレームを受けた際は叱りますが、技術に関しては経験を積んで磨いていくしかないんです。Vinakaで働いてくれているスタッフに対しては、そういった考え方も含め良い方向に導いていきたいです。

物事をプラスに転換していくことは生きる上で非常に大事ですよね。

笹井 結局は自分の感情をコントロールできるのは自分しかいません。上手くいかないことがあっても「全部自分の責任」と考えれば、他人にイライラすることもないですし、自分以外の何かに左右されることが少なくなり、気持ちが楽になりました。

20代半ばで、起業から経営、スタッフ育成など多岐に渡ってご活躍ですが、今後の目標を聞かせてください。

笹井 準備中でもあるのですが、エステのスクールとコンサルティング事業をしたいと思っています。この業界は、私のような未経験で起業したい方向けのコンサルティングがほぼありません。京都河原町の一等地に店舗を構えているのも、コンサル事業を始めるためです。実体験として伝えられる幅が広がりますし、信頼してもらえるポイントの一つではないかと思います。

起業してから店舗拡大を経て、笹井さんの中で変わったことと変わらないことはありますか。

笹井 仕事をする上での喜びが少しずつ変わってきました。今でもお客さんから直接お礼を言ってもらえることが嬉しいというのは変わっていません。でも、スタッフがお客さんから喜んでもらっている姿を見ることが何よりもやりがいにつながっています。私だけでなく、もっと活躍できる女性を増やしたい、応援したい、そのために自分に何ができるか、と考えるだけでとてもワクワクします。

女性は、結婚、妊娠、出産などでどうしてもキャリアアップを諦めざるを得ない人もいたり、理解がない職場もまだまだたくさんあります。

笹井 私も今年3歳になる娘がいるのですが、娘に寂しい思いもさせたくないし、周りからも親が仕事で忙しくてかわいそうという目では見られたくないんです。Vinakaは子供と一緒に出勤できるようにしています。私以外に子供がいるスタッフがいるのですが、子供の交流の場にもなりますし、働いているお母さんを見て、かっこいいと思ってもらえたら、とても嬉しいです。この業界は女性社会だからこそ、ママにとって働きやすい職場が増えていったらな、と思っています。

笹井さんが憧れる女性はいますか。

笹井 たくさんいます、同業界に限らず。「このひとに会ってみたい」と思ったら、どこにでも会いに行きます。もっともっといろいろな人の話を聞いてみたい。本から学んだことやたくさんの人と話したことは自分の財産になっています。

 

 

(取材を終えて)

2005年のスタンフォード大学でスティーブ・ジョブズが言った言葉があります。「将来を予想して、点と点をつなぐことはできない。後々の人生で振り返った時にしか、点と点をつなぐことはできない。今やっていることが将来、自身の役に立つと信じて取り組むこと」という言葉です。笹井さんの行動力(点)と自分を信じて突き進む力が、将来どのように結ばれていくのか、とても楽しみです。

(取材・文/髙久美優)

 

 

Vinaka 

〒604-8033 京都府京都市中京区奈良屋町299番地 4階西 ファーストコート河原町

ADVERTISING

Recommend

記事一覧へ
Recommend Contents
このページのトップへ