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分業化と専門化は、社会的、経済的な力を強める。だがその一方で、弱体化を導くのも事実だ

マイケル・ポーラン

 アメリカきっての食の権威マイケル・ポーランの言葉を紹介。彼は、食と農、ガーデニングなど、人間と自然の共存について長きにわたり執筆を続けているジャーナリスト。人間は料理をする生き物だと語る一方、加工食品が人類の危機を招いていると論説する。料理を発明したことで人類は高度な文明を築き上げたという説があるのも興味深い。著書『人間は料理をする(上)火と水』から抜粋した。
 
 分業化や専門化の最たるものといえば、現代医療ではないかと思う。
 
 胃が痛ければ胃腸科、腰が痛ければ整形外科、胸の痛みは循環器、皮膚疾患だと皮膚科など、
 西洋医学を元にした現代医療は、本来はひとつであるはずの身体を臓器や器官ひとつひとつを分断する考えのもとに成り立っている。
 結果、病気は減っただろうか。

 

 小児科医の真弓定夫氏の言葉を思い出した。
「医療が進歩すれば、当然、病気が減らなくてはおかしいし、患者や医療費も減るはずです。ところが、患者も医療費も年々増加するばかりです」
 
 日本の医療は、分業化と専門化によって社会的地位の確率や経済成長に一翼を担った。
 が、同時に国民全体の弱体化を導いたことも事実だろう。
 
「アダム・スミスをはじめ、多くの人が指摘してきたように、分業体制は多くの恩恵をもたらした。……生産者として、あるいは消費者としての役割分担がすすんだことで、現在、わたしたちは必要なもののすべてを専門家に委ねるようになった」
 
 食品は食品産業、健康は医療の専門家、メンタルヘルスはセラピストと製薬会社、自然保護は環境保護活動家、政治活動は政治家など、専門家にすべてを委ねることで、自分の専門外だからと責任を放棄し、自分にふりかかる問題を自分ごとと受け止められなくなったと、マイケル・ポーランは言う。
 
 分業化や専門化は、社会的、経済的な力にはなっても、
 人に無力感、依存、無知をもたらし、責任感を蝕むのだと。
 
 ではどうすれば、その状況が打破できるのか。
 
「自分の中で、消費者よりも生産者の比重を増やしていこう。生活に必要なものを自分で作ることを習慣にしていけば、自立心と自由が増し、どこか遠くにある企業への依存が減っていく。必要なものを得ようとする際には、お金だけでなく自分の力を使おう。自分が食べるものへの責任を担うようになれば、流れはわたしたち自身と社会へ戻りはじめる」
 
 つまり、できることは自分でやる。
 そういうことだ。
 
 便利さに身を投じるのではなく、自らの体を使って大地に立てば、

 健康も自由も豊かさも、手にすることができるだろう。

 

「美しい日本のことば」連載中

「日日是食日」連載中

(200203 第614回)

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紺碧の将

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