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ひとがひとでなくなるのは 自分を愛することをやめるときだ

吉野弘

 戦後の現代詩の一翼を担った詩人、吉野弘の言葉である。生まれたばかりの我が子へ贈った詩「菜々子に」の中にあった。菜々子とは長女の名前。次女が生まれた時も同じように詩を書いている。吉野弘といえば、「祝婚歌」が有名だろう。「二人が仲睦まじくいるためには、愚かでいるほうがいい……」と、結婚式でこの詩を贈られた新郎新婦は多いという。
 
― 唐突だが
 菜々子
 お父さんは お前に
 多くを期待しないだろう。
 ひとが
 ほかからの期待に応えようとして
 どんなに
 自分を駄目にしてしまうか
 お父さんは はっきり
 知ってしまったから。
 
 お父さんが
 お前にあげたいものは
 健康と
 自分を愛する心だ。
 
 ひとが
 ひとでなくなるのは
 自分を愛することをやめるときだ。
 
 自分を愛することをやめるとき
 ひとは
 他人を愛することをやめ
 世界を見失ってしまう
 
 自分があるとき
 他人あり
 世界がある。
 
 お父さんにも
 お母さんにも
 酸っぱい苦労がふえた。
 苦労は
 今はお前にあげられない。
 
 お前にあげたいものは
 香りのよい健康と
 かちとるにむづかしく
 はぐくむにむづかしい
 自分を愛する心だ。
 
 
 冒頭を省き、ほぼ全文である。
 
 自分を愛せずして、人を愛することなどできるだろうか。
 自分を大切にできない人が、周りを大切にできるだろうか。
 
 ほんとうに他者への愛がある人は、自分を愛し、自分を大切にできる人。
 
「偽」という文字を眺めてほしい。
 吉野の詩にある。
 
 ― 人の為とは偽りさ
  荀子『性悪説』に曰く
 「人の性は悪、その善なるは偽りなり」と
  人為を施した為人(ひととなり)は偽りということか
 
  自分の胸に手を当てて考えてほしい。
  その愛はほんとうなのか、自分は自分を愛しているか、と。

 

「美しい日本のことば」連載中

 
(190508 第405回)

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