才能というもののいちばんのサポーターは、時間と生き方だと思う
フレンチレストラン「コート・ドール」のオーナーシェフ、斉須政雄氏の言葉だ。1973年にフランスに渡り、12年間フランス料理界に身を置いた後、同店の料理長に就任した斉須氏は、現在オーナーシェフとして活躍している。著書『調理場という戦場』から抜粋した。ちなみに、同店には公式ホームページがない。同業者のシェフたちがその味を求めて集う一流店だというのに。そこがまた、心惹かれる。
若いうちから特別な才能を発揮する人がいる。
ところが、ある時期を堺にして、その才能に翳りがでてくることはよくある。
慢心から努力を怠ったか、もしくは、成長過程で別の何かに心奪われたか、あるいはたまたまうまくいっただけということも。
いずれにしても、才能の萌芽をうまく育てることができなかったということだ。
生まれたばかりの新芽はまだまだか弱い。
水も太陽の光も、適度な栄養も必要だろう。
柔らかい葉は虫に食べられてしまう恐れもある。
雑草のように強い根をもっているなら、さほど問題はないのだが・・・。
才能という生き物を育てるには時間がかかるが、生き方という滋養が成長を助けてくれることはまちがいない。
「時間や生き方なしでは、やりたいことの最後までたどりつかない…仕事に合った生き方を持続できるかできないかが、才能の開花を決めるように思います。
生き方は才能が発芽するためのバリアのようなものでしょう。どういう意識で道のりをたどってきたか、それによって与えられたごほうびが、成就する夢なのだろうと思います」
夢を手にした人たちは、一様に同じことを言う。
「才能とは継続する力だ」と。
では、継続するためにはどうすればいいのか。
ある人が言った。
「いつやめてもいいと思ってやるから続くのですよ」と。
誰かがやれと言ったわけではない。
自分が好きではじめたことなら、やめることはいつでもできるし、本当に好きなことは続くものだ。
(180603 第436回)