自分の力の及ばないものは放っておく
エピクテトス
紀元1世紀後半、ローマ帝政時代に生きた哲学者エピクテトスの言葉。
エピクテトスは奴隷という出自に加え、不自由な体、国外追放処分、不安定な収入(塾の講師だった)など、理不尽の塊ともいえる境涯に生き、それでも自分の人生を良きものにしようと努めた。それだからこそ、彼の言葉は現代人にも響いてくる。
えてして人は、自分ではどうにもならないことに気を煩わされることが多い。例えば、アメリカの大統領選のことをどんなに考えても、なんにもならないことは明白。バイデンはボケが始まってるとか、トランプは下品で政治家よりボクシングの興行師の方が向いていると憤っても、選挙の結果にはなんら影響しない。つまり、自分の持ち時間を浪費しているのだ。
エピクテトスは、自分の力の及ぶものとそうではないものを「区別」せよと言っている。自分の努力によってどうにかできることには力を注ぎ、どうにもならないものは放っておけ、と。その区別をするだけで、日々の心持ちが変わる。
われわれの日常には「自分の力ではどうにもならない」ことが多いことを忘れたくない。
(240701 第861回)
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