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いい絵というものは、柿ひとつかいてあっても、大宇宙が感じられる気がするものです

小林古径

 近代日本画の大家の一人、小林古径の言葉である。美しい品のある線と瑞々しい清らかな色が特徴の古径の絵は、見るものの背筋まで、すーっと伸ばす。絵から立ちのぼる神々しいまでの品格がそうさせるのだろうか。そこに生命の光を感じるからにちがいない。

 

 柿ひとつの中に、大宇宙がある。

 花一輪、葉っぱ一枚にも、大宇宙がある。

 つぶさに見れば、それがわかると古径は言う。

 その大宇宙を描きたいのだと。

 

 生命が共鳴するのだろう。

 眺めれば眺めるほど、描けば描くほど、柿と自分がひとつになって、線や色の境界がなくなり、ふたつは大宇宙に溶け合うのだ。

 

 命が共鳴し合うということは、そういうことにちがいない。

 

 「線としていいものは、画面に独立して、飛び離れた存在となっているものではないと思う。画面に独立して目立つようなものは、いい線ではないのではあるまいか。何だかいい絵と称するものの線は、みんなそんな気がする」

 

 現れたものの中へ、すべての線が溶けこんでいなければならないのではないか。

 線ばかりでなく色も同じでなければ……。

 かといって、目立たないから、なくてもいいというわけではない。

 つまり、あるべきところにあればいい。

 

 と、古径は線と色を考察する。

 

 線も色も、描こうとするものに添っているものだと。

 

 大宇宙の調和は美しい。

 

 バッハやモーツァルトなど、古今東西の大音楽家たちが大宇宙にあふれる調べを拾い集めて音楽にしたのも、

 万有引力の法則で知られるアイザック・ニュートンや、インドの天才数学者ラマヌジャン、コンピューターを発明したアラン・チューリングなど、世界中の数学者たちがこぞって大宇宙の法則を顕にしているのも、

 その美しさに気づいてしまったがために、それを伝える使命を与えられたのにちがいない。

 

 秩序(美)とは、元来こういうものだと。

 

 ほんとうに美しいものは、密やかに隠されているのだ。

 見えないもの、聞こえないものの中に、たっぷりと。

 

神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

●「美しい日本のことば」連載中

 今回は「お花畑」を紹介。

「お花畑」とは、かわいらしい言葉ですね。バーネットの小説『秘密の花園』のように、女の子が花畑で遊ぶ姿が浮かびます。でも、ここで取り上げる「お花畑」は、それとはちょっと違います。これは高山植物の花野のことです。続きは……。

(230714 第846回)

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紺碧の将
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