日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】
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群れない、慣れない、頼らない

堀文子

 100年の一生を全うしてこの世を去った女流画家、堀文子さんのモットーだったのがこれ。「独立独歩」という言葉は彼女のために用意されたものではないかと思うほど、その生涯は「ひとりきり」であった。情熱はすべて絵に託し、生きとし生けるものの命から受けとる感動をひとかけらも取りこぼすまいと、あえて一人でいることを選んだのだ。この言葉を胸に刻んで。
 
 昔も今も、洋の東西にかかわらず、
 群れから離れて孤独を選んで生きる人は多い。
 
 西行、良寛、芭蕉、ゴーギャン、グレン・グールド、ヘルマン・ヘッセ、etc、etc、etc・・・。
 彼らはみんな、孤独を選んだ人である。
 なぜか。
 自分らしく生きたいから。
 
 堀文子は一人を選んだ理由をこう語る。

 

「わたしは人と一緒に行動すると、自分を見失って、その人に似てきます。自分を保つためには、なるべく人と離れていた方がいいんです」

 

 だから、〝群れない〟のだと。

 マンネリになって感動を失うことが嫌で、〝慣れない〟よう一所不在を選び、
 どんなに下手でも自分らしく生きるために、人に〝頼らない〟ようにしたという。

 

「人に頼れば引き上げてくださる。でもそれでは、その人を模倣するだけで、自分の生き方を探す努力をしなくなる。人に甘えていると、自力で生きる力が鈍ります」
 
 人は一人では生きていけないことを理解した上での「ひとり」の選択。
 決して生易しいものではない。
 しかし、それをあえて選んだのは、世間の騒音にまどわされて、もっとも大切なこの世の本質を見失うことを恐れたから。
 自分の命に正直であるために、世間とは距離を置き、命の本源に近づいていこうとしたのである。
 
 果てしなく広がる宇宙、深海に息づく生物、地中に眠る生き物、かたい殻で覆われたタネ、母体で十月十日をすごす赤ん坊。
 
 この世の創造主は、どうやら暗闇と静寂の中に生命の神秘を隠したらしい。
 それをひたすらに乞い願うものが、創造主の意思に触れんがために「ひとり」を選んで暗闇と静寂に対峙しているのかもしれない。
 
 生々流転の世の中であるがゆえ、人は決して変わらぬものを求めたくなる。

 

 共に手を取り合って生きるのも一生。
「ひとり」という孤独を生きるのも一生。
 

 どちらを選んだとしても、
「自分」という人間は、この世でたった「ひとり」だということは、決して変わらないのだ。

 

●「美しい日本のことば」連載中

 今回は、「五月雨」を紹介。「さみだれ」です。梅雨の季節に東北を旅していた松尾芭蕉も――五月雨を集めて早し最上川 と詠んでいます。続きは……。

https://www.umashi-bito.or.jp/column/

●「日日是食日」連載中

(200709 第652回)

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紺碧の将

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