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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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未体験の懐かしい味

2015.07.05

スポンタネの個室より庭を眺める 前回に続き、京都ネタを。

 京都に大好きな店がある。
 スポンタネ。以前は「ビストロ・スポンタネ」だが、今は「レストラン・スポンタネ」と名乗っている。以前も食事の内容は明らかに「レストラン」だったが、実態に対してへりくだっているところに好感がもてた。
 祇園四条からほど近い宮川筋にあった。その時の様子を拙著『なにゆえ仕事はこれほど楽しいのか』に書いたことがある。かなり狭い店で、私は厨房の真ん前の狭いカウンターに陣取り、料理中の仕事ぶりを眺めながら絶品をいただくことを楽しみにしていた。
 数年前、京都西山に移転した。阪急線・東向日町駅で下車し、タクシーで約10分。以前と比べればかなり不便になったが、それでもわざわざ訪れる価値がある。
 由緒ある民家を買い取り、大幅に手を入れたという。庭や店内の設えなど、文句のつけどころがない。料理と同様、「どうだ!」というハッタリがないのだ。さりげなく禅の扁額が掛かっているのも私好み。
 谷岡博之シェフの料理は、私がこれまでに食べた料理の記憶の中では、3本の指に入る。ひとことで言い表せば、「未体験の懐かしい味」とでも言おうか。初めて体験する料理が多いのに、懐かしい気がするのだ。
 もっとも、私は料理評論家ではないし、グルメを気取っているわけでもない。ただ、五感を働かせ、名声などとは関係なく、「この料理はほんとうに美味しいかどうか」だけを判断基準にしているだけだ。
 以前、深く感動したのは、ひと晩かけて抽出したトマトのエッセンスを小ぶりなガラスの器でいただいたときだ。手間と比べると、見た目の「成果」は哀しいくらいに乏しい。大皿にいろいろな色のソースで無駄な絵を描きたがる人が見たら一笑に付すだろう。しかし、一口味わっただけで、涙が来るくらいの幸福感に包まれた。なんという味だろう!
津田楼の個室より坪庭を 今回は氷見の牡蠣のジュレがけ、ホワイトアスパラのグリエにウニと香草を添えたもの、フォアグラとタマネギのブレゼ、オマール海老など魚介のブイヤベース、山椒とレモンのシャーベット、出雲産の牛肉に白味噌ソースをかけたもの、塩キャラメルのブリュレ、そしてデザート・コーヒーというラインナップだった。
 そのどれもが、谷岡シェフしか創らないオリジナルの味となっている。
 全室個室。部屋はいずれもじゅうぶんな広さがあり、庭の造作が美しく映えている。
レストラン・スポンタネ
http://spontane.org/

 もうひとつ、祇園の津田楼もお薦め。
 こちらは前回書いた建仁寺のすぐそば。古くからあった茶屋を買い取り、改修したのが以前『Japanist』でもご紹介した美術品蒐集家の村田理如氏。明治の超絶技巧による作品を膨大に蒐集していて、数年前に京都三年坂美術館を開いた。
 そういう人が経営している店だから、器をはじめ、きわめて高い美意識で統一されているのは当然のこと。かといって、上から目線ではない。じつに心地いいのだ。
 料理は純和食。静寂に包まれ、料理と器の絶妙な饗宴を味わいながら長い時間を過ごす。それだけで心身がリセットされる。
津田楼
http://tsudaro.com/
(150705 第564回 写真上はスポンタネの個室、下は津田楼の個室)

 

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