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紺碧の将

ちょっとしたセンスの話

2013.01.09

丸の内パークビルの柱 世の中にたくさんのものがあるが、大きく2つに分けられる。ダサいものとそうでないもの。

 あっ、今うかつにも「ダサい」という表現を使ってしまったが、本来、文筆業をなりわいにしている者が使うべき言葉ではないのかもしれない。「ダサい」はもともと「ダ・サイタマ」からきている言葉であり、「では栃木はどうなのだ?」と返されれば、答えに窮するのは必定。

 ということで、言い換えよう。「野暮ったいものとそうでないもの」。

 野暮ったいものがどういうものかはこの際どうでもいい。きりがないくらいたくさんあるので。

 先日、三菱一号館美術館の内側にあるパティオで夕空を眺めていたとき、思いがけず、素敵な建築デザインを目にすることができた。それが右の写真である。

 丸の内パークビルの数本の柱に施された植物の装飾。なんともいえない風情を醸しだしている。無機的な建築材と一見、無造作に生えた種々の植物たち。そのバランスがじつに洒落ていた。誰がデザインしたのかわからないが、こういうものを社会に生み出す人こそ、本当のデザイナーと呼びたい。

 思えば、私もグラフィックデザインをなりわいの一部にしている。27歳の頃からだから、すでに26年近くになる。今ではその比重はかなり低くなっているが、そうはいってもグラフィックデザインに対するこだわりは人並み以上だと自負している。

 そんな私にとってのヒーローは田中一光だ。おりしも、今、六本木ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTで「田中一光とデザインの前後左右」展が開催されているので、近日中に見に行こうと思っている。何か感じるものがあれば、この欄で紹介したい。

 もう一人、好きなグラフィックデザイナーがいる。原研哉氏だ。

 なんといっても、超がつくくらいのシンプルさがいい。最小限の情報量で多くを伝える力量、加えて余白にこめる思いは、いにしえの歌人や日本画家を彷彿とさせる。

 代表的な仕事のひとつに無印良品がある。長野オリンピックのデザインも彼が手がけた。ブックデザインもいい。白川静の『常用字解』、集英社新書シリーズなど、余白を生かした装幀は他を圧倒している。私は文字を立体的にしたり、フチをつけたり、遊びっぽいフォントを使うのは好きではない。「へぇ〜、では、このブログのトップはどうなの?」と言われそうだが、これは確信犯なのである。でも、そろそろ飽きてきたので、イメージを変えようかとも思っているが……。

 『Japanist』のデザインの99%は不肖・私が手がけているが、氏と共通しているところも多い(と自画自賛)。見開きカラーページに文章が2段と1行の小見出しというページを毎号、対談の中に盛り込んでいるが、それなどはまさにそうだろう。

 そうは言いつつ、もっともっと贅肉を削ぎ落としたいと思っている。取材を深掘りするのと同様、「マガジンでもない、書籍でもない」その曖昧なレンジはどう表現すればいいのかと考えている。だから4月に発行する第17号では、思い切って修正を加えるつもりである。

(130109 第393回 写真は、丸の内パークビルの柱)

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