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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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人生とは、自分の扉を開けること

2016.12.24

扉を開けろ 表紙 今年の9月下旬以来、書き進めてきた『扉を開けろ 小西忠禮の突破力』(弊社刊)が年末に完成する。

 この本の企画は、点と点が重なるような偶然がつながって、形になった。もとはといえば、私が13年前に書いた『魂の伝承—アラン・シャペルの弟子たち』を読んだS氏が、本の中に知人の名があることに気づき、ひさしぶりにその人を訪ねたことがきっかけとなった。
 その人とは、本書の主人公、小西忠禮氏である。彼は、神戸に〈アラン・シャペル〉ができる3年前からアラン・シャペル付きのスタッフとして神戸ポートピアホテルに籍を置き、オープン後も統括総料理長としてシャペルを支えた人物である。
 S氏の引き合わせで、今年の8月下旬、福井県敦賀市で小西氏と会い、数分とたたずに意気投合した。9月中旬に神戸で最初の取材をし、その後神戸で2回、横浜で1回、取材をした。360枚(原稿用紙換算)を2ヶ月半ていどで書き上げ、年内の完成にこぎつけた。他の仕事をしながら、これほど集中力を維持できたのは、ひとえに小西氏の波乱万丈な人生に負うところ大である。
 昭和42(1967)年、小西氏は「パリのリッツで働きたい」という夢を胸に渡仏した。当時、1ドル360円。海外へ行くこと自体、きわめて困難な時代だった。初任給8,000円の頃、片道の船賃が19万円というのだから、およそ2年分の給料に匹敵する。帰りの切符を持たず、宿も職も決まっていない若者が、わずかばかりの現金を握りしめてフランスへ渡った時の気持ちはいかばかりだったろう。極貧の生活を続けながら短期間でフランス語を修得して職を見つけ、まだ滞在許可証や労働許可証がなかった頃からリッツに出向いて、採用してくれるよう直談判をした。
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 その後、〈ポール・ボキューズ〉〈シュヴァイツァーホフ〉〈ホテル・プラザ・アテネ〉〈トロワグロ〉など、超一流の舞台を経て帰国。大阪ロイヤルホテル(現リーガロイヤルホテル大阪)やポートピアホテル、ホテルオークラ神戸などで働いた後、60歳を機に料理界から退き、義母が創設した幼稚園の経営に転身する。「選ばれた人たちのために調理をする」という人生から「これからの日本を担う子供たちのために尽くす」人生にシフトをチェンジしたのだ。
 今、その幼稚園は、園児の募集開始とともに定員をオーバーし、毎年抽選を行っているほど絶大な人気を得ている。

 本書は第1章から4章まで、小西氏の半生を追っている。通常の取材文の形をとらず、ドキュメンタリー小説的なタッチを織り交ぜて波乱万丈な人生の幾幕かを描いた。第5章は幼稚園の経営に関することを説明的な記述で、第6章は現在の小西氏に取材するという形で彼のメッセージをまとめた。最後の章は、彼がどのような世界に飛び込んでいったかということを理解してもらう一助になればと思い、私なりのフランス料理文化論を書いた。
 小西氏は語っている。
 「人生に待ち受ける扉で、簡単に開くものはない。もし簡単に開いたとすれば、それはあなたを成長させる節目の扉ではない」
 扉は誰の前にもあるのだが、要はそれを開けるか否か。もちろん、開けるのは本人である。
 できれば若い世代の人たちに読んでほしいが、一方で、年配の方たちにも勇気と示唆を与える書だと自負している。つまり、「ひとつの人生で、ふたつの仕事を全うする」ということ。長寿が当たり前の時代になり、ひとつの役割を終えた後のテーマが見つからず、失意の日々をおくっている人がいるとしたら、この本には多くのヒントが散りばめられていると断言する。
 本が売れない時代だが、相変わらず本は新しく作られている。小西氏も本から多くの力を得たように、情報過多時代だからこそ、良質の本が輝きを発するのだと思う。そして、手前味噌ながら、この本は良質の本であると胸を張って言う。
 完成は12月28日頃。本サイトでも注文を受け付けます。
 定価1,800円+税。A4判(通常の四六判よりちょっと大きめのサイズ)、ハードカバー上製本
(161224 第688回 写真上は本の表紙。下は小西氏がフランスへ渡った時に乗った貨客船「ラオス号」)

 

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