うーにゃん先生の こころのマッサージ
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美し人
ココロバエ
ちからのある言葉
ちからのある言葉

すべては自分の心がつくっている

2019.12.19

第13話 

 

一切唯心造也 

 

 今日は、みゆの元同僚が訪ねてくる。うーにゃんが、みゆのメンターだと聞き、相談にのってほしいというのだ。

「なんか、気が重いなあ」

 うーにゃんは、みゆに言った。

「会って話を聞いて、ちょっとアドバイスするだけだから」

「でも……」

「〝少しだけ、だから贅沢〟のモンプチ、ごちそうするから」

「それ、いつも食べてるよ」

 ♪ピンポ〜ン

 玄関のチャイムが鳴り、みゆが出迎える。入ってきたのは、長身の若い女性だ。みゆがうーにゃんに紹介すると、女性ははにかみながらペコンと頭を下げた。

「はじめまして、ユイといいます。うーにゃん先生ですね。お噂はお聞きしています」

 風貌に似合わず、物言いがしっかりしている。

「はいはい、わたしがうーにゃんですよ」

 うーにゃんは、わざとイジワルばあさん風に答える。

 すると、女性の態度が豹変した。

「うそうそ! ネコがしゃべった。みゆが言ったこと、うそじゃなかったんだ」

 うそうそと言いながら、うそじゃなかったんだという。

「だから言ったじゃない。人間の言葉を話すって」

「えー、ほんとう? ありえな〜い」

 ありえなくはない。現実に起きていることである。はしゃぎぶりを見ていると悩みがあるとは思えないが、うーにゃんは話を聞くことにした。

 ユイが言うには、職場にとても意地悪な先輩がいて、その人のことを考えるだけで息が苦しくなってしまうという。

「よくあることだよね」

 うーにゃんは、ため息をつきながら言った。

「どの職場にもそういう人はいるよ。職場に限らず、人がたくさん集まっているところは社会の縮図だから。ニンゲン以外の自然界なら、食うか食われるか。意地悪されるくらい、なんてことないと思うけど」

 みゆも相槌を打つ。

「でもさあ、ほんっとにひどいんだから。みゆが辞めてから転勤してきたんだけど、そのオバサン、ずっと結婚できなかった理由がわかる」

「で、うーにどうしてほしいの?」

「折れそうな心がシャキッとするようなアドバイスをしてほしいの」

「そんな、魔法みたいなことできないよ」

「でも、みゆは、うーにゃん先生の言葉で何度も救われたって言っていますよ」

 うーにゃんの表情が少し緩んだ。そう言われれば、嬉しくないはずがない。

「しかたないな〜」

 うーにゃんは、きちんとネコ座りして瞑目し、低い声でつぶやいた。

「一切唯心造也(いっさいただこころのつくるなり)」

「え? なになに。わかんな〜い」

 女性のキャピキャピ声が裏返った。

「この世に、意地悪な人という存在はないの。あなた、唯識論って知っている?」

「ユイシキロン? 知らな〜い」

 やたら語尾を伸ばす。

「この世にあるものはすべて自分の心がつくりだした仮のもので、心のほかに事物的存在はないということ。唯物論と対極をなす考え方だよ」

「なんか、よけいわからないわ」

「つまりね、あなたの心が意地悪な人をつくりだしているということ。その人は意地悪な面ももっているけど、あなたはそこしか見ていないから、その人がそう見えるだけ。ほんとうは、あなたにだって意地悪な心があるのよ」

「まあ、そう言われてみればそうかなあ」

「あなたも意地悪な心を持っているから、ほかの人の意地悪な面が見えてくる。だからね、この人、意地悪だって思ったら、少し深呼吸して息を整え、それは自分の心がつくっているって思ってごらんなさい。その人に対する印象が少しずつ変わっていくから」

「そうかぁ! こんど、やってみるよ」

 ユイは素直な性格だ。だからこそみゆと仲がいいのだろうとうーにゃんは思った。

「それと、ひとつお願いがあるんだけど、うーにゃん先生、わたしのメンターにもなってください。だって、みゆを見ていると、いつも気持ちが平らっていうか、うちの会社にいた頃、毎日仕事でミスして上司から叱られていたのに、なにくわぬ顔でしれーっとしていたんだもの。ぜったい、うーにゃん先生のおかげだよ」

「毎日叱られていたの?」

 うーにゃんは、みゆに向かってそうつぶやいた。

「……うん」

 みゆはバツの悪そうな表情をする。

「うーを評価してくれるのはうれしいけど……」

 うーにゃんが言い終わらないうちに、部屋のドアが開いて、パパが顔を出した。瞬間、ユイはのけぞって大声をあげた。

 パパは満面の笑みで、「きみがマユミちゃんだね。はなしはみゆから聞いているよ」と言った。

「あのぉ……、ユイといいますが」

「そうそう、ユイちゃんだったね」

 パパは照れ隠しに大声で笑った。

 またぁ?

 みゆとうーにゃんは呆れ果てた。みゆの友だちが来ると、パパはいつも嬉々として割り込んでくる。

「ネコに小判、ネコの耳に念仏、ネコのひたい、ネコの手も借りたい、ネコも木から落ちる、ネコも歩けば棒に当たる、ネコババとかいうだろう? なにか困ったことがあったら、ネコに頼るより私に相談しなさい」

 そう言ってパパは胸をドンと叩いた。実際、ドンという音がした。

 ユイはわけがわからず目を白黒させている。

「パパ、またママに注意されるよ」

 みゆのひとことでパパは急に神妙な顔になり、黙り込んでしまった。

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