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ココロバエ
禅ねこうーにゃんのちょっとした助言

ワトソンvsシャーロック・ホームズ

2021.09.26

 最近というか、ちょっと前から気になっていることがある。
 それは、「若者たちに早口の人が多い」ということ。
「どうしてそんなに早くしゃべるの?」と言いたくなるほど、彼らは一様に早口でしゃべる。あまりに早くて、慣れないうちは何度も聞き返してしまったほどだ。
 最初はわが子だけがそうなんだろうと思っていたのだけれど、どうやらそうではないらしく、早口は今の若い人たちに共通する特徴のようで、姪っ子や友人知人の子供たちと話してもみんな同じ。街で耳にする会話も、テレビやラジオから流れてくる言葉も、とにかく早い。話し言葉のスピードで年齢が推し量れそうなほど、若者世代と中高年世代のトークスピードは、ぜんぜん違う。動作が早いとか遅いとか、そういう類のことじゃなくて、日常会語がもう「生麦生米生卵」のような早口言葉になっているのだ。
「そう感じるのはわたしだけ?」と思っていたら、同じように感じている知人もいたので安心した。
 

 ものごとのスピードだけじゃなく、話し言葉も早くなってしまったのかと思うと、ちょっと寂しい。先日、ラジオで作家の小川洋子さんの声を聴いて、やっぱり一語一語ゆっくり丁寧に話す言葉はやさしく聞こえるし、ほっとする。そんなことを思うのも、歳のせいなのか、はたまた秋という物憂い季節のせいなのか。
 
 どちらにしても、とにかく昨今のスピードについていけないわたしの脳神経回路は、ますますスローペースになってしまったようだ。周りが早くなればなるほど、ゆっくりゆるゆる動きが鈍い。おかげで、会話のトンチンカン具合はパワーアップした。
 ここまでくれば、もう諦めてトンチンカンをさらにパワーアップさせるしかないと、腹を括った。
 超高速バンザイ!だ。
 
 というわけで、ついていけないから、今はとりあえずいろんなことを遠くから眺めている。
 仕事がら言葉を探すことの多いわたしには、その方が収穫も多いし、ほどよい距離感も心地いい。
 
 言葉の収穫といえば、以前は本などからいろんな知識を学びとろうと躍起になっていたけれど、今は目にするもの耳にするものから感じとることの方が断然多く、それがまた楽しい。
 たとえば、玄関を掃除しているときに、家族の靴の汚れ方や靴底のすり減り方を目にすると、「左足がすり減ってるな」とか「また泥道を歩いてきたな」とか、本人は気づいていない行動パターンが見えてくるから面白い。もちろん、自分のクセもわかる。そんな風に、日常には推理小説ばりの面白い発見があるものだ。
 道を歩いていても、石ころや草木や、鳥の声や風の音が教えてくれることだって、たくさんある。世の中のスピードがどうであれ、彼らは常にマイペースだから、急ぎ足では大切なことも見落としてしまいかねない。

 せっかく目の前に真実が広がっているのだから。

 シャーロック・ホームズも言ってたっけ。

「いいかね、ワトソン君。君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのでは大違いなんだよ」
 なんてね。

 もっとも、シャーロック・ホームズの頭脳はまったくスローじゃないけれど……。

(画像:Wikipediaより)

 

神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

●「美しい日本のことば」連載中

 今回は「ゆかしい」を紹介。―― とくゆかしきもの 巻染、むら濃、くくり物など染めたる。人の子生みたるに、男女と聞かまほし。よき人さらなり。清少納言は『枕草子』の中で「ゆかしきもの」として、染物の仕上がり、子供の性別、身分の高い人のことなど、知りたくて仕方がないものを並べています。 続きは……。

 

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