しのの歌
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田口佳史講座ライブ配信
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また君と電話をしたいゆでたまごの殻むくように朝焼けが来る


 ゆでたまごの殻をむくときの、一箇所に上手く指が入ると一気につるんとめくれる瞬間が好き。手に持っているのは同じたまごであるはずなのに、殻をはがした途端に台所の光をまるく滑らせるなめらかな体へと生まれ変わる。ここにあるのは確かにさっきまでとは違う新しいたまごなのだと、朝のまだぼんやりした頭ではそんな錯覚さえしてしまう。

 好きな友人と長電話した夜、お互いに沈黙している時間すら愛しくて、あっという間にページを閉じ始める夜にあわてて電話を切っても耳がその子の吐息を忘れるまで布団の傍に縮こまって、何をするでもなく街を眺めてみたりする。

 窓の端に朝日が現れたと思ったら、みるみるうちに街は朝焼けの色になる。まるでチョコレート液にくぐらせたマシュマロのように、殻を一気に剥がしたゆでたまごのように。それは確かにいつもと同じ街で、いつもと同じ平凡な朝なのだけど。オレンジと青の混ざった空の色も、頬を刺す空気のつめたさも、たった今うまれた新しい世界のものみたいだ。

 スマホの画面にまだ、さっきまで押しつけていた耳の形に温もりがある。おやすみって終わった会話にはおはようって言って続けたい。今度電話する時はどんな話をしようかな。

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Profile

三海 詩野

三海 詩野

(みうみ しの)

2001年10月2日生まれ。北関東出身。
全国高校生短歌大会(短歌甲子園)、2017・2018年団体戦2連覇ほか、高校3年間で計7つの全国1位を受賞。
好きな食べ物は葡萄とサバとパンケーキ。将来の夢は自分の歌集を出すこと、葡萄畑の麓に家を建てること。

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