しのの歌
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田口佳史講座ライブ配信
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バラの蕾ふれればぞくりと硬かった初めてきみに嘘をついた日


 昔から人付き合いが苦手だ。でもそれは人が苦手なんじゃなくて、人と関わることにネガティブすぎてしまう自分自身が苦手なだけなんだと思う。もしかしてあの発言ダメだったかな、あの行動負担に思わせちゃったかな、あのときこう言えたらよかったのに自分はどうして言えなかったんだろう、楽しく遊び回った日でもお風呂に入るとマイナスの渦がぐるぐるとわたしを飲み込んで、溺れそうになる。

 友だち、と呼べる人はとても少ないけど、だからせめて正直でいたいなと思っている。大好きな友だちに初めて嘘をついてしまった帰り道を今でも覚えているから。

 罪悪感と自己否定の中で見つめた赤いバラの蕾は、これから始まる初夏の空気を含んだようにやわらかく膨らんでいた。この蕾なら自分を赦してくれるかもしれないとさえ思えるような。逃げるように、救いを求めるように手を伸ばしたら、背中まで突き刺すようなぞくりと硬い感触に、思わず手を引っ込めた。

 あの瞬間、わたしは確かに世界のすべてに拒絶されていた。そう思うほどの絶望だった。あの子も、この道端のバラの蕾さえも、きっとわたしを赦さない。罪悪感と自己否定は痛みとなって指先にまとわりついて、どうしようもなく涙が溢れた。

 嘘をつきたくない。

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Profile

三海 詩野

三海 詩野

(みうみ しの)

2001年10月2日生まれ。北関東出身。
全国高校生短歌大会(短歌甲子園)、2017・2018年団体戦2連覇ほか、高校3年間で計7つの全国1位を受賞。
好きな食べ物は葡萄とサバとパンケーキ。将来の夢は自分の歌集を出すこと、葡萄畑の麓に家を建てること。

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