しのの歌
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ココロバエ
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桜降り終えていちめんはなびらの駅前広場のうつくしい虚無


 すぐに散っちゃうから。死を連想するから。だから、桜の花が好き。18年間育ったこの街はなんにもない田舎だけど、なんにもないぶん、その空白を誤魔化すように春にはそこらじゅうで桜が咲く。普段は鳩と猫しかいない駅で、一時間に一本しか来ない電車を待ちながら観光客の持つ脚の長いカメラを眺めて暇を潰す時間が、わたしにとっての春の季語だった。
 4月も終わりに近づけば、潮の引くように日々は静かに巻き戻されて、桜のある田舎は元のなにもない田舎になる。鳩と猫しかいない駅で、残りのなにもない11ヶ月が始まる。まだ誰にも踏まれていない花びらのあふれる広いコンクリートはどことなく湖面みたいだ。きょむ、と口にするときのうつくしさを、これから大学が始まって都会の駅が当たり前になっても、桜のない春に見慣れてしまっても、ずっと覚えていたいと思う。

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Profile

三海 詩野

三海 詩野

(みうみ しの)

2001年10月2日生まれ。北関東出身。
全国高校生短歌大会(短歌甲子園)、2017・2018年団体戦2連覇ほか、高校3年間で計7つの全国1位を受賞。
好きな食べ物は葡萄とサバとパンケーキ。将来の夢は自分の歌集を出すこと、葡萄畑の麓に家を建てること。

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