メンターとしての中国古典
HOME > Chinoma > メンターとしての中国古典 > これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず

ADVERTISING

紺碧の将

これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず

2019.04.09

 好きで楽しむが最強!

 私の好きな論語の一節です。その意味は、物事を理解し知っている者は、それを好んでいる人には及ばない、物事を好んでいる人は、それを心から楽しんでいる者には及ばない、

 ということです。

 

「好きこそものの上手なれ」の言葉になるように、好きなことであれば楽しくできるし、楽しんでやればうまくできる。好きであれば長続きするし、没頭もできるので、腕が上がり成果も出て、誰に負けないレベルに達するということです。つまり、好きで楽しいがフローの状態につながるのです。

※フローとは、何かをしているとき、集中力が最高になり完全に没頭し、作業プロセスを楽しむといった感覚に入り込んでいるような精神状態をさします。

 

やらされ感、義務感が大敵!

 

 しかし、現実は勉強でも仕事でもすぐに結果が出るわけでもなく、辛く苦しいことが多々あります。やらないといけないことはわかっていても、なかなか取りかかれない、ついつい先延ばししてしまう。そんなことが少なくありません。

 会社なら、仕事が遅れていると、上司から指導され、改善を促されます。給料を貰うのですから当然でしょう。そうなると、「やらされ感」が生まれ、仕事がつまらなくなります。

 気は向かないけれど、やらなければならない。義務感だけの仕事は苦痛以外の何物でもありません。こんなふうにイヤイヤやっている状態では、必要最低限のことしかできず、良い結果も期待できません。

 こんな精神状態でお金のためだけに仕事を日々続けているのは、人生自体が悲劇と言えるのではないでしょうか。

 

仕事の楽しみや喜びは何ですか?

 

 私が行っている研修やワークショップでは、「仕事の楽しみや喜びは何ですか」と質問を投げかけます。すると、「ありがとう!」「助かった!」など感謝されるた時、「契約が取れた」「難問を解決できた」「大きなプロジェクトが完成した」など何かを達成した時、「自分の関わったものが世の中に出て役立っている」と感じた時などの意見が出てきます。つまり、仕事において楽しみや喜びを感じる瞬間というのは、給料だけではなく、自分が誰かの役に立っていることを感じたり、その結果、人から感謝されたり、達成感や自分の成長が感じられたりという精神的なところが大きいのです。    

 心理学者のアルフレッド・アドラーは、「たとえ感謝されなくても、人は他の人の役に立っていると思うことで幸福を味わえる」とも言っています。

 

好きで楽しいが、飛躍につながる

 

 私は仕事を進める上で大きな悩みがありました。それは、いかにしてお客様に支持され続けるかということです。ビジネスの世界では常に競争があり、いくら良いサービスでも、レベルアップがないと飽きられます。つまり、常にお客様の期待を超える製品やサービスが求められているということです。徹夜や休日返上で対応して評価されたとしても、肉体や精神には限界があり、不休不眠を続けることなどできません。集中力が落ちてミスを犯す危険性もありますし、どんなに頑張っても、評価される保証もありません。

 ではどうすれば良いのか?

 その答えが、「好きで楽しい」ということです。仕事の内容自体が好きなら、自然と没頭するでしょう。時間を惜しまず、結果を気にせず、そのプロセスを楽しむことになるでしょう。好きなことを楽しんで没頭して精一杯やったのであれば、仮に結果が悪かったとしても、それは仕方がないとあきらめがつきます。

 しかし、好きなことを楽しんでやっていれば、自然と創意工夫が生まれ、物事を突き詰めてやることになり、何らかのブレークスルーが生まれるでしょう。笑顔でやっていれば周囲の人もいい気分になり、チームワークも良くなるでしょう。結果、お客樣の期待を超える結果を生み出す可能性が高まります。つまり、人事を尽くして天命を待つ、境地でしょうか。

 

学校教育の問題

 

 好きで楽しいが、いい仕事・いい人生に条件であるにもかかわらず、学校教育では知識の量で優劣を決めます。つまり、「これを知る者」を増やす制度です。たしかに、学んで覚えてテストでいい点数をはじき出す過程で、集中力や忍耐力、学びの工夫、そして達成感を味わい、自信も身につけて、社会で生きていく基礎能力を養うことはできます。

 しかし、ただ点数を弾き出すためだけの暗記は苦痛以外の何物でもありません。

 例えば、歴史などは人間を学び、未来を見通すための重要な学問であり、人生を豊かにする教養です。しかし、テストのためだけに年号や偉人の名前を暗記するだけの勉強は無味乾燥であり、テストが終われば綺麗さっぱり忘れてしまいました。また、知識量だけを問うことへの嫌悪感から、歴史嫌いや勉強嫌いを誘発していることも否定できないでしょう。

 

仕事を好きになるには

 

 仕事は好きで楽しいことばかりでありません。

 では、どうすれば好きなことを楽しくできるでしょうか。

 方法は2つ。

 一つは、好きなことを仕事にする方法。例えば、音楽が好きでミュージシャンになる。絵が好きで画家になる。動物が好きで動物の飼育員になる。花が好きで花屋になる。初めての人とでも話すのが好きだから、営業の仕事に、人のお世話をするのが好きだから介護の仕事に就く。

つまり、就職です。好きな仕事に就くことです(一般的に会社に入ることを就職と言いますが、実際は仕事内容を選ばず、会社に入る就社といえるでしょう)。

 もう一つは、目の前の仕事に中に、好きで楽しい部分を見つけることです。

 私自身、最初に勤めた会社には職種希望はなく就社しましたが、仕事をしながら会社の仕組み(システム)というものに興味を持ちました。汗を流して頑張って働くことは大事ですが、社員が連携して効率よく成果を出すためには、ものづくりや経営の良い仕組み(システム)が必要不可欠と感じました。

 誰に指示されるわけでもなく、自分で勉強して仕事に活かしました。これが現在の経営コンサルタントの道へとつながっています(当時から、私は人に言われてやるのが嫌で、上司に指示される前に先手をとって提案していました)。

 また、40代になってからは、システムより人間そのものに興味の対象が移り、人のやる気(モチベーション)やいい働き方、人としてのあり方、いい人生に興味を抱くようになりました。もちろん、誰に強要されるわけでもなく。

人の感情や人生が対象となると、日常のすべてが学びの教材であり、仕事とプライベートの区分も曖昧で、仕事と勉強、遊びの境目もあってないようなものです。(笑)

 好きで楽しいで仕事をすれば、自ずと結果はついてくるので、信頼され裁量権(自由)が増えて、管理されるストレスが減ります。時間やお金が自由に使えれば、ますます仕事が好きで楽しくなるという、プラスのスパイラル・サイクルに入ります。

 

好きで楽しいを問い続ける

 

 しかし、現実には与えられた仕事をこなしていくだけで精一杯という人が大半です。今の働き方が問題と思っていても、「仕方がない」「仕事はこういうもの」「言われたことをやっていれば身分は保証される」などと自分に言いきかせ、ごまかし続けていると、自分で考えるということをしなくなり、奴隷のように組織に従うだけの人生で終わってしまう危険性もあります。

 この世に生を受けた限り、幸せな人生を送ることが我々の使命です。

「仕事の何が好きで、何を楽しいと思えるのか」「どうすればうまくいくのか」「一生続けていくためにはどうすればいいのか」などと考えることは、境遇や立場にかかわらず、すべての働く人にとって重要なことではないでしょうか。

 こんな問いに自問自答し続け、悔いのない人生を送りたいものです。

 

 

 

ADVERTISING

Recommend

記事一覧へ
Recommend Contents
このページのトップへ