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紺碧の将

美術館、私のタイプは……

2011.07.13

 日本人の美術展好きは、世界の中でも一頭抜きんでていると思う。それはそれでいいのだが、ちょっとメジャーな画家の展覧会だと作品を堪能するというより、人の群れを見ているような気になることがある。美を鑑賞したくて貴重な時間とお金を使って美術館に足を運んでいるのに、疲労だけが残るという結果になったことは数知れない。

 だから、「有名な画家×有名な美術館」という組み合わせの場合は、よほど興味をそそられる内容でなければわざわざ足を運ぶことはない。大々的に宣伝している場合は尚のこと……。もちろん、万難を排しても見なければいけないという例外はあるが。

 私が好きな美術館は、こじんまりとして独自の個性があるところだ。たとえば、根津美術館、山種美術館、北茨城の天心記念美術館、島根の足立美術館、裏磐梯の諸橋近代美術館、箱根のポーラ美術館、地元の宇都宮美術館などがパッと思い浮かぶところだが、ここで紹介する東京都庭園美術館もそのひとつ。

 東京都庭園美術館は、もともと朝香宮邸として昭和8(1933年) に建てられた建物。戦後のある時期、外務大臣、首相公邸、国の迎賓館などにも使われたが、建設から約半世紀たって美術館として新しく生まれ変わった。

 さすが宮家の邸宅だけあって、風格がある。室内装飾も美しい。大胆なアール・デコ様式で、壁を深紅色にするなど配色も斬新である。

 パリやバルセロナのピカソ美術館をはじめ、大きな邸宅を美術館として使うというケースはヨーロッパに多いが、この美術館はそれらにも劣らない魅力を秘めている。昨年、開催された有本利夫展なんか、もののみごとに室内装飾と調和していた。

 

 ところで、人はなぜ美術館に足を運ぶのだろう。いつも不思議に思う。

 こんなことを書いては大変失礼だが、どう見ても美的なものに関心がなさそうな人も人混みのなかに多数混じっていることが少なくない。観覧料はけっして安いとはいえないし、前述のように、人気のある美術展だと殺人的な混み方になる。それでも、せっせと美術館通いをするからには何らかの理由があるのだと思う。

 さて、なんだろう?

 「本物の力」が人を呼ぶのだと思う。絵でも音楽でもスポーツでもそうだが、「本物」だけがもつ力がテレパシーのように多くの人間の感覚に作用しているのではないか。そして、人は磁石に引きつけられるように美術館へ足を運び、そこで「本物」に触れることになる。その結果、生きる力をもらう。

 一方、「まがいもの」はどうか。以前も書いたが、 世の中は圧倒的多数のまがいものとほんの少しの本物、そして、そのどちらでもないものによって構成されているというのが私の見方だ。だから、かなり注意して日常生活をおくらないと、気がついたら周りは「まがいもの」だらけということもなきにしもあらずだ。

 それはそうと、東京都庭園美術館、庭も広くてお薦めです。

(110713 第265回 写真は東京都庭園美術館)

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