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紺碧の将

お地蔵さんに心を映す

2010.11.07

 最近、美術展とクラシックのコンサートにしきりに足を運んでいる。美術と音楽はいずれも私が10代の頃から熱中している分野だが、東京はもしかするとそれらの開催回数が世界で最も多いのではないかと思う。もっとも、パリは街の中に100ほども美術館がひしめいているので、企画展などやらなくても圧倒的に美術世界一だろうが……。

 

 私が好きな美術館のひとつに根津美術館がある。昨年、隈研吾氏が設計を担当し、新装なったが、収蔵品もさることながら(ちなみに円山応挙の『藤花図屏風』は私の好きな絵ベスト10に入る)、庭がいい。青山の一等地にあれほど広大な庭をもつこと自体、驚き桃の木山椒の木である(古い?)。

 この美術館は東武鉄道の社長などを務めた実業家・根津嘉一郎が蒐集した美術品を保存し、展示するためにつくられたが、明治時代、鉄道を手がけた実業家は巨万の富を得たのだろう。みな、とんでもないお金持ちになっている。

 と、それはともかく、根津美術館は何がいいといって、庭のあちこちにある地蔵さんがいいのだ。さまざまなポーズ、表情がまさに人の内面を表している。しかも、懊悩している姿ではない。穏やかな表情で、庭内を散策する人の心を和ませてくれる。それらを見て、自分の心の内を観照するのもいい。

 さらに、年月を物語る苔の生え具合が素敵だ。まさしく「無余無欠」(余るところなく、欠けているところもない)。こういうものは新設された美術館ではけっしてできないことである。

(101107 第205回 写真は根津美術館の庭にある地蔵)

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