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紺碧の将

自分を投影する山

2019.08.11

 毎年恒例の夏山登山、今回は北アルプスの玄関口に位置する荒々しい山・焼岳に登った。その名のとおり、北アルプス唯一の活火山で、7合目から上の山肌は岩場に覆われている。シューシューと音をたててガスを噴き出しているところがいくつもあり、あたりには硫黄の臭いが漂っている。

 前週、空振をともなう低周波地震がたびたび観測されていたことから、若干の杞憂があった。御嶽山噴火の記憶がまだ生々しく残っている。もし、登山途中、噴火したらどうしようと脳裏をかすめる。しかし、そのときはそのときだ。ドンピシャでその時にぶつかってしまうとしたら、よほど運がないとあきらめるしかないと思い、予定どおり上高地へ向かった。

 

 今年も酷い暑さが続いている。風呂より暑いってどういうわけ?

 しかし、上高地はちがう。たしかに直射日光を受ければそれなりに暑いが、暑さの質がちがう。湿気がなく、風も爽やか。木陰に入れば快適である。

 河童橋近辺の宿がとれず、大正池ホテルを予約したが、結果オーライだった。設備は予想以上に良かったし、食事も満足。なにより、大正池に面している立地が素晴らしい。池の畔から仰ぎ見る焼岳は、ほらご覧のとおり(右上写真)。大正池にその荒々しい全容がくっきりと映り、あたかも万華鏡のような景観を晒している。

 1915(大正4)年、焼岳の噴火によって泥流が梓川をせき止め、池ができた。大正時代にできたから大正池というわけである。北アルプスのなかではけっして高い方ではない。しかし、上高地との標高差は約1000メートル。しかも、焼岳小屋がある新中尾峠から上は足場の悪い岩場の急登が続く。一日で下山するには7時間以上かかる。そこそこの体力を要す。

 焼岳は槍ヶ岳から連なる稜線の南端に位置する。だから、頂上に立って北を向けば、豪快な景色が見える。昨年登った西穂高岳への稜線が伸び、遠くに槍ヶ岳が尖った姿を現している。左には豊満な笠ヶ岳、右に目を転ずれば以前登ったことのある蝶ヶ岳が見える。足元には噴火口と火口湖がある。コツコツと登り続けた者だけが味わえる極上のご褒美である。

 下山途中、左太ももが痙攣しそうになった。ゆっくり用心しながら一歩一歩進む。急な段差があると、脚がピクッとする。ときどき脚をマッサージする。幸い、痙攣に見舞われず、無事ホテルに辿りつくことができた。そのときに一気飲みしたビールの旨いこと! どんな高価なディナーよりも旨い。比較するだけアホらしい。それくらい旨い。結局、たて続けに3缶を空にしてしまった。

 ところで、今回の登山で気づいたことがある。白人の登山者が多いことだ。小学生くらいの子供を連れた多くのファミリーとすれちがった。みな、直射日光に対して無防備で、颯爽としている。見たところ、ドイツ人かフランス人のようだ。中国人は上高地近辺の散策をするが、山には登らない。日韓関係の正常化(?)の影響か、韓国語はほとんど聞こえなかった。

 60歳を超えると急に体力がなくなるという。ほんとうだろうか? 

 かく言う私は以前にまして溌剌としている。食欲は旺盛、たっぷり眠れるし、体は軽快に動く。酷暑でも走っている。体力が衰えたと感じない。

 そんな私を友人は「野獣系」だという。そうかもしれない。目指すは知的生活を愉しむ野獣。ヘンにおとなしくならず、イノシシのように突っ走りたい。

 

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(190811 第923回 写真上は大正池と焼岳。下は焼岳頂上の髙久)

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