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紺碧の将

これからの地域興しのヒント

2019.08.03

 アーケード商店街は、ちょっとした人口を抱えた都市なら、どこにでもある。雨の日も傘をささずに歩くことができ、地元の名店や老舗が集まっていて、街でいちばんの繁華街になっていた。

「なっていた」と過去形で書いたのは、現在、どこのアーケード商店街も、見る影もなく寂れているからだ。夕方など、人が集まる時間になっても、閑散としている。通りには商店しかなく、街路樹など変化に乏しいから、人通りが少なくなるとシャッターだけが目立ってよけいに侘しい。

 市の中心部に美観地区を抱え、観光客の多い岡山県倉敷市でさえ、同様だ。かつて繁栄していたと想像できる駅前のアーケード商店街は、写真下にあるように、ゴーストタウン一歩前だ。これは夕方6時頃の光景である。

 一方、歩いてすぐにある歴史美観地区には大勢の通行人がいた。

 倉敷の現象を見れば、街づくりの要点がわかる。もはやアーケード商店街など、過去の遺物そのもの。人工的につくった商店街など、時間がたって建物が劣化すれば、魅力を失っていく。モノを買うことが華だった時代は、物が不足していたからこそ。今は逆に物が溢れかえり、どんどん捨てたいくらいだ。

 20代前半とおぼしき若い女性連れが、自転車で通り過ぎる時、こんなことを言っていた。「わたしが子供の頃は、このあたりはすごく都会だったんだよね」と。昔日の賑わいと比べ、あまりの落魄ぶりに嘆息をもらしていた。

 では、なぜ、歴史美観地区には多くの人が集まっているのか。

 景観が美しいからだろう。そういうところに身をおけば、心地よいと多くの人が知っているのだ。もうひとつは、その街の歴史が息づいているからだ。心なしか、そういうエリアにある商店は、どこも上品だ。自分だけ目立とうというさかしらな商魂はあまり見られない。そういう場所は、我欲を抑える力を秘めているのかもしれない。

 来日した外国人観光客が、なににお金を使っているかというデータがあった。ヨーロッパ人やアメリカ人は、半分近くを宿泊費に充てていた。滞在中の質を上げたいと思っているのだろう。中国人や韓国人は、宿泊費は少なく抑え、買い物に費やしている。かつての日本人がそうだったように、彼らは物を買いたいのだ。

 しかし、そう遠からず、物など欲しくないと思うようになるだろう。現に私もそうである。欲しい物など、ほとんどないし、うっかり物をもらおうものなら、とっておくべきか捨ててしまうべきか悩んでしまう。保存するにしても、場所がない。

 

 1500枚くらいのCDが氾濫し、置き場に困る事態となった。そこで、CDを収納するファイルケースを購入し、ブックレットとディスクだけを残してプラスチックケースを捨てることにした。これも断捨離のひとつか。カテゴリー別にファイルを分ければ、聴きたいものがすぐに取り出せるし、きれいにインデックスをつければインテリア上も好ましい。私はプラスチックが嫌いで、身の回りにはなるべく置きたくない。プラスチック同士がぶつかる時のガチャガチャという音はとても下品である。

 なぜ、人工的な音は不愉快なのだろう……。ま、いいか。

 話を戻そう。

 地方創生が叫ばれて久しいが、ヒントはずっと前からたくさんある。先人から受け継いだ歴史的建造物や街路樹を大切にしながら景観を整え、新しい風を吹き込む。アーケード商店街をすべて壊すくらいの大胆な変革をしないと、都市間競争で後塵を拝することになるのは明らかではないか。

 こういう時代だからこそ、それぞれの地域の民度と見識が問われる。

 

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(190730 第920回 写真上は倉敷市の美観地区。下はアーケード商店街)

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