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紺碧の将

人の移動に見る日本の姿

2019.02.07

 2月4日付の読売新聞に興味深い記事が載っていた。東京一極集中が進んでいるというテーマで、平成の30年間に、47都道府県の人口移動がどのようになされたかを可視化したものだ。

 これを見ると、いろいろなことがわかる。

 まずは、記事の主旨でもある東京一極集中が進んでいるということ。これについては巷間さまざまなところで報道されているとおりだ。30年間の転入超過は約107万人。ぶっちぎりの1位である。以下、神奈川、千葉、埼玉と続き、一都三県の首都圏に260万人以上が移ってきたことになる。他、転入超過は宮城、茨城、栃木、愛知、三重、滋賀、兵庫、福岡のみ。他は転出超過である。関東では唯一、群馬だけが転出超過。

 では、転出超過が大きかったのはどこか? これがなんと大阪なのである。こちらもぶっちぎりで、44万人。人口としては横浜の方が多いが、長年「東京・大阪の二大都市」と言われてきた。それなのに、この差はなんだ? 

 図下の矢印は、どの県から転入してきたかを表す図だが、大阪に移住した人が多いのは和歌山くらいで、あとはちょぼちょぼ。つまり、「大阪に移り住みたい」という人が少なく、逆に大阪に住んでいる人の多くが東京や兵庫へ移っていることがわかる。本サイト「Chinoma」の閲覧者は、都市別で大阪市がずっと1位であることもあり、少しシンパシーを感じているのだが、なんとかならないものか。これでは、東高西低が進むばかりだろう。

 もうひとつ、興味深い事実がわかった。東京はあらゆる地域から人を呼び寄せているが、一部の地域のみ転出超過となっている。図の真ん中上の「東京」という字がそれを可視化したもの。「京」の字の右下の矢印は転出超過を表すが、なんと関東の他県への転出超過が34万人もあるのだ。これには驚くと同時に、納得した。そういう人が私の周りにもけっこういる。つまり、こういうことが言えそうだ。一度、東京に移住し、その後、隣県へ移住するというパターン。東京に憧れて移り住んだものの、家賃は高いし、競争社会だし、過密だしというような理由で郊外へ移り住む。その結果として、神奈川、千葉、埼玉の通勤時間(往復)は1時間45分程度と圧倒的に長い。その時間を有効活用できる人であればともかく、スマホでフェイスブックやラインやニュースやショッピングなどを見ているだけでは途方もない無駄な時間と言っていいだろう。数年間で積算したら、恐ろしいほどの無駄だ。

 さて、これからどう変わるのだろう?

 私見だが、そのうち東京一極集中は緩和されるかもしれない。ネット環境の発達によって、首都圏にいなくても東京と関わる仕事を続けることができる。あえて長時間の通勤を耐え忍ぶ必要はなくなる。

 その時、どこへ移るのか。それこそ、それぞれの地域のブランドがものを言うのだろう。どこに住むか、それを促すのは、「○○に住みたい」と思わせる心なのだから。

(190207 第876回)

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