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紺碧の将

魅力満載、都一中さん

2018.07.12

 なにごとも初体験は良い。

 三味線方、一中節の12代目宗家、都一中さんの「都一中シンポジオン」と浄瑠璃の体験レッスンに参加してしまった。

 どうしてそんなことになったかといえば、今月発売の『Japanist』38号の巻頭対談が都一中さんと中田宏さんの対談で、一中さんの話がとても面白く、興味を惹かれたからだ。

 若い頃、ロックバンドを組んでいて、30代から16年くらいチェロを習うという経験はあるものの(ものにならなかったが)、邦楽にはまったく縁がなかった。しかし、そんな私でもとても楽しめた。一中節と常磐津の違いもなんとなくわかった。浄瑠璃の難しさはさらにわかった。

 このシンポジオン、「一中節が解き明かす、日本の音楽の秘密」と題され、合計6回、新宿駅東口の「柿傳」で行われる。

 

 さて、今回は『Japanist』の記事を先取りし、一中さんの発言からいくつかを抜粋して紹介したい。

「家元というのは一番至らなくていい。家元より優れた人がたくさんいてはじめて流儀が盛んになるのであって、家元というのは何よりも一中節のことを愛し、何か問題があったときに謝ればいいんだと言われた」

「大旦那たちの支えによって一中節は生き残った。彼らは江戸の人で豊かな教養もあった。それに、事業を起こそうと東京に出てきた人であれば、社交界を知る必要があったし、こういうものができないと話にならない。大旦那たちの商売はリベラルアーツがないと成り立たないんです」

「父が僕を早く現場に出したくて、自分の鞄持ちをさせていたんですけど、学生だと舞台に出られないから東京藝大を1年で中退しました」

「見せ場を作らないのが一中節」

「コツはね、音を聞かない。音と音の間、空白に注目すること。空白に音以上の意味があるのが一中節です。たとえば日本のお寺の鐘。これも、次の鐘を鳴らす前の音が消えてから、その消えた後に悟る、消えた後の余韻や余情、そこに深い思いが感じられる」

「宗家を継いだころ、脳腫瘍になりました。頭を開けて手術したんですけど。本当に死ぬかも知れないと思いました。ただ、当時は一中節をやるのがものすごく苦痛だったものですから、CTスキャンをとって、これが脳腫瘍ですと言われたときは、本心からラッキーと思いました(笑)。これで休めるとね。だから、ストレッチャーに乗るのが幸せでした。入院中なんて、この上なく幸せでしたよ。それから3ヶ月くらい仕事を休んでいたのですが、休んでいるということが幸せだった。そのときになにがいけなかったのかと、病気になった原因を考えてみた」

「これからは人に笑ってもらえばいい。あいつバカだなって、バカにされる人生でいい。そのかわり、なにか自分ができることでお役に立ちたいと思いました。あのとき、これからの人生は自分のためじゃなく人の幸せのための人生にしますから、どうか命をつないでくださいって、どこの神様ってわけではないですけど、お願いしちゃいました」

「人の好き嫌いって、していいんだ」

「政治の問題、外交問題などもそうですね。各国とのつき合い方の答えは一中節の中にある」

 ……もっともっと紹介したいのはやまやまだが、このへんで。

 とにかく都一中さん、幅広いリベラルアーツと軽妙な語り口、そして笑顔が素敵。魅力満載の人である。

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。今回は「人を成長させる原動力」。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(180712 第826回 写真上は都一中シンポジオンの一場面、下は『Japanist』38号の巻頭対談)

 

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