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紺碧の将

ヘンな人、良寛の書

2018.07.08

 良寛に憧れているわけではないし、そもそもあのような生活はできない。裕福な家に生まれたが、なんにもできず、お坊さんになってもまったく適応できず、しかたなく放浪。生家からそう遠くない山中で托鉢をしながら生きた。夜盗に入られた時は、わずかな持ち物である掛毛布を盗めるよう、自ら寝返りをうったり、蚊も血を吸いたいのだろうと脚を蚊帳から出して寝ていたとか、子供たちと手まりをついて遊んでばかりいたとかの逸話はたくさんある。良寛が住んでいた五合庵に行ったことがあるが、じつに粗末な庵であった。

 そういう人が身近にいたら、かなり奇異な目で見られると思うが、なぜ今、人気なのか。おそらく、現代人はあまりにも自由がなく、さまざまなものに縛られているから、その反動(憧れ)があるのではないか。自由気ままそうでいいなあ、と。自分とかけ離れている人が書いたからこそ、その書に感銘を受けるというのは一理ある。

 

 永青文庫で「心のふるさと良寛」展を見た。これだけの多くの良寛作品が一堂に会すことはめったにない。

 私が好きな良寛の作品は、右上の『いろは』(今回は展示されていない)や『一二三』など、邪気のない、子供が書いたようなものだが、じつは楷書体も草書体も自由に操れる人であった。かなも漢字もいい。流麗であったり、枯淡であったり、跳躍するようであったり。文の内容に応じて、適宜使い分けている。弟子の貞心尼に宛てて書いた『先日は眼病の』など、全体を見るとみごとに均整がとれている。

 展示は11日まで。永青文庫は良寛の書を飾るにふさわしい佇まいがある。

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。今回は「春風に舞うような叱り方」。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(180708 第825回 写真上は良寛の書『いろは』、下は永青文庫)

 

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