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紺碧の将

「なにが足りなかったんでしょうね」

2018.07.04

 ワールドカップのベルギー戦で劇的な敗戦を喫した後、西野監督はそう言った。

 とても意義深い言葉である。自分の目の黒いうち、日本代表がワールドカップに出場することはないだろうと思っていた身からすれば、世界の16強に入っただけで文句はない。まして、あと一歩でベスト8というところまで行った。強豪ベルギーを相手に、最後まで苦しめたのはたしか。誇りに思っていい。

 しかし、西野監督は冷静にそう振り返った。私は、そういう姿勢が大切だと思う。

 歴史を積み上げていく過程においては仕方がないのだが、足りないものは「経験」だ。ポーランド戦でのボール回しも初めての経験なら、後半開始早々2点をあげ、残り約40分をどう守り切るかという状況も初めてのこと。サッカー界では「2点リードは最も危険なリード」と言われている。1点差であれば緊張感が持続する。3点差があれば、破綻がない限り、追いつかれることはあまりない。しかし、2点差は安全なリードではないにもかかわらず、気が緩みがちになる。

 事実、2点差をつけるまでの日本チームは、一丸となって相手の長所を消すことに成功した。分析班の成果だろう、全員がきわめて高いレベルの緊張感をもって相手の動きを予期し、事前に対処した。

 ところが、乾の鮮やかなシュートで2点差としたところから、色気が出てきた。「あわよくば3点目も」という雰囲気になってしまった。ベルギーが前がかりにくるのはわかりきっている。そういう状況においてガチンコ勝負に出ても、地力で劣る日本が優勢であり続けることは不可能だ。

 案の定、緻密だった連携は徐々に緩み始め、逆にベルギーはチームとしての精度を増していった。

 2点というリードに安住せず、それまでより守りを固め、相手が前がかりになって空いたスペースを突いてカウンター攻撃を仕掛ける。この徹底ができなかった。

 とはいえ、今回の経験は必ず次回に活かせる。こういうことを積み重ねて、強くなっていく。

 敗戦から学ぶ。あれ? どこかで聞いたことがあるような……。そうだ、徳川家康だった。少し前の本ブログでそのことを書いている。やはり、いつの時代も、負けることから学べることは多いのだ。

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。今回は「春風に舞うような叱り方」。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(180704 第824回 写真は、ブラジル・ワールドカップ)

 

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