多樂スパイス

食の企画講義

2009.09.12

 毎年恒例の「食の企画」講義を終えた。

 三友学園という3つの専門学校を運営している学校法人からの依頼で、毎年10時間だけ特別講義を受け持っている。

 年毎にある傾向が進んでいる。それは、社会人の割合が増えているということだ。今年は約半分が社会人であった。高校を卒業する生徒の数が減っているということと、社会に出てから途中で自分の進路を変更したいと思う人が増えているということでもあるだろう。

 

 毎回、前半の3時間を費やして、食の企画とはまったく関係ないことを話す。

 戦後日本の歩み、現在とこれからの社会情勢、これから求められる人間とは、仕事の意義とは、成功するための鉄則とは…等々。数年前はこういう話をすると、必ず何割かは眠っていた。しかし、今はそういう人は一人もいない。不況のおかげだと思う。不況は人間を磨いてくれる。

 私はまず、本人が望んだわけではないのに現代の日本に生まれたという幸運に感謝してほしいということから始める。今、当たり前のように享受している繁栄は、先人たちの想像を絶する努力の上に築かれているということなども。これは何かを始める上で、不可欠の認識だと思っているから。

 それから実際の企画に移る。毎年、「栃木の食材、特産物を全国に広める」というテーマで、各チームに企画を練ってもらう。どういう商品か、内容の特長は、姿・形は、販売方法は、ネーミングやキャッチフレーズは、味の特徴は、価格は、予想される効果は……などアイデアを出し合い、各チームのリーダーの下、最後の日にみんなの前でプレゼンテーションする。

 プレゼンの後、生徒たちは気づく。数日前はまっさらで何もなかったのに、今はこうして自分たちのアイデアを人前で発表できるくらいに仕上がっているということを。これこそが進歩なのだと感じる。

「どお、みんな。一週間前を思い出してごらん。この企画はなーんにもなかったよね」

 生徒たちの表情が一変するのがわかる。たしかに、一週間前は何にもなかった。それなのに……。

 企画というのは、言葉を変えれば、自分の気持ちを形にし、世の中に作用させること。その一連の中に、世の中を見る目、人とのつき合い方、その道のプロとしての技術や知識、知恵などが包括される。政治も経営も同じだ。

 不況はそういう意識を高めてくれるである。

(090912 第115回 写真はプレゼン中の生徒)

 

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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