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紺碧の将

タバコは客を選別する

2017.12.23

 通りを歩いていたら、昔ながらの喫茶店があり、右写真のようなポスターが貼ってあった。「タバコ吸えます」。思わず笑ってしまった。現代の喫煙者の苦悩が目に見えるようだった。

 昔はどこへ行ってもタバコの煙がもうもうとたちこめていた。飛行機の国際線でも喫煙オーケーで、ひどい時は、隣に座っていた人が15時間以上もタバコを吸いっぱなしでえらい目にあったことがある。その頃から比べると、隔世の感がある。

 私は20歳の頃から27歳まで吸っていた。法律を守って20歳まで吸わなかったわけではなく、周りのみんなが吸っていたから天邪鬼の性格が災いして(?)吸えなかっただけである。27歳でやめたのは、ランニングを始めたことに起因している。約7年間、とくだん依存症になったことはない。タバコがなくなれば一ヶ月くらい吸わなかった時もあった。

 27歳でタバコをやめてから、ますます嫌いになった。だから、今の風潮は大歓迎である。自分から「そういう場」に踏み入れない限り、煙害に悩まされることはないからだ。

 あらためて思う。私の周りにいる多くの友人・知人のほぼ全員がタバコを吸っていないのはなぜだろう、と(ところがどうしたことか、会社のスタッフのほとんどは吸っている)。タバコを吸う、吸わないは何らかの分水嶺になっていることはまちがいない。

 Chinoma(市ヶ谷の事務所)の下にカフェがある。ケイティーという名で、とびきり旨いコーヒーを出してくれる。Chinomaへ行った時は必ず利用する。

 昨年、オーナーの中村さんはある決断をした。それまで分煙だったものを全席禁煙にしたのだ。個人経営で全席禁煙は珍しい。彼は一杯ずつていねいにコーヒーを煎れ、「きちんと」飲んでもらうことを望んでいる。だから、コーヒーを頼むなりノートパソコンをテーブルの上に広げ、カチャカチャとキーボードを叩き、席を立つ前に冷めたコーヒーを一気飲みするような輩は歓迎していない。じつに由緒正しいカフェマンである。

 さて、全席禁煙によって客筋はどう変わったか? まず、女性客が増えた。今では全体の8割以上だとか。反対に、男性のサラリーマンが減った。これはどういうことかと極端に言えば、「味や雰囲気やその他のセンスを求める」客が増え、「コーヒーや食べ物はこだわらないから、とにかくタバコを吸いたい」という人が減ったことを意味する(男性のサラリーマンでも味と雰囲気とセンスを求めている人がいるのは事実だが)。もちろん、中村さんの狙い通りだった。当初は喫煙者から苦情を寄せられたが、みごと客を選別したのである。

 このことは自分が客の立場になって考えるとわかる。以前、多樂塾の懇親会の時に使っていた近所の居酒屋がある。値段も手頃で女将の客あしらいもよく、どれを頼んでも美味しい。しかし、欠点があった。客の大半がサラリーマンで、哀しいくらいタバコを吸うのだ。店内は煙で充満し、店を出る頃には服や髪の毛がタバコの臭いで染まっている。

 結局、足が遠のいてしまった。

(171223 第776回)

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