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紺碧の将

拙著を読んで海外雄飛した若者の活躍

2017.05.14

 いろいろ含めると、これまでに13冊の本を書いた。1冊の本が仕上がるまでには途方もない労力と時間がかかるが、その本を求めている人に読んでもらえなかったら本を出した意味がない。かといって、いったい誰が読んでくれるのか、想定できるものではない。ある意味、執筆は宙に点を打つような仕事でもある。

 だから、読後の感想をもらうのはうれしい。まして、本を読んで生き方が変わったと言われたら、執筆者冥利に尽きるというものだ。
 先日、会社宛にこんなメールが届いた。
「パリで料理人をしている安發伸太郎と申します。
宇都宮で過ごした高校生時代に高久さまのお書きになった『魂の伝承』を読んでフランス料理を志し、18歳で渡仏して13年経った今でもよく読み直しています。
今週一時帰国するため、御社にお伺いしてもよろしいでしょうか」という内容だった。
 今は都内暮らしなので、こちらに来てもらえればということで、自宅で会うことになった。
 安發(あわ)君、右写真のような好青年である。背丈はすらりと伸び、洗練された趣を帯している。
 聞けば、なんとエリゼ宮近くにある高級ホテル「ル ブリストル」の中の三つ星レストラン〈エピキュール〉の副料理長(スーシェフ)として働いているという。27歳で副料理長に抜擢されたというのだ。
 実家は和食店を営んでいるが、『魂の伝承』を読み、自分もフランス料理人になれると信じて渡仏した。3、4年で帰国しようと思ったが、居心地が良くて13年も滞在し、今は16区のパッシーに住んでいるという。
「パッシーにはバルザックの家があるね。何度も行ったことがある」
「その近くです」
 パッシーは高級住宅街である。
「27歳で副料理長になって、年上のスタッフを使いづらくない?」と訊いたら、
「フランスでは人は人、自分は自分ですから、力さえ認めてもらえばやりづらいことはありません」と返ってきた。
 個人主義のいい面だろう。日本なら、嫉妬の対象になっているはずだ。そういえば、次期大統領のマクロン氏も30代だった。
 あと7、8年、経営のことも併せて勉強し、日本に帰って店を出したいという。
 安發君、がんばれ!
(170514 第721回 写真上は安發伸太郎君。下は〈エピキュール〉の店内)

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