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紺碧の将

街のDNA

2008.11.14

 松本市にある旧開智学校へ行った。

 なんと風情のある、そして厳かな学校だろう。明治6年に開校され、昭和39年に閉校されるまでの90年間、多くの人材を輩出している。

 右の写真の通り、なんてったって外観のデザインがお洒落。和風と洋風が調和していて、白壁と薄いブルーの組み合わせも絶妙だ。

 校舎内もきちんと保存されている。当時の机や椅子、黒板、ダルマストーブなど、思わず小学生の頃の記憶が甦る。床板はとても美しく磨き上げられている。木の材質がいいのだろうか、使い込んだ光沢がある。

 明治天皇の御座所もあった。巡幸の際、この学校に立ち寄られたとのこと。当時の様子を描いた絵があり、思わず見とれてしまった。

 子どもたちの絵もあった。戦時中に描かれた絵であるため、ほとんどが戦争一色だった。「米英ヲ撃滅セヨ」「スパイヲ追ヒダセ」というような言葉をいたいけな小学生が書いているのだ。教育の役割というものを感じないわけにはいかない。

 説明文を読んで最も驚いたことは、この学校の建築費の約70%を住民が寄付しているということ。自分たちの子孫にいい教育を施そうと、多くの住民が貴重な浄財をはたいたのである。

 なるほど、それを知って街を歩けば昔日の気概が今でも脈打っていることに気づく。古い建物がきちんと保存されているのだ。だから、街を歩いて楽しい。

 街づくりって、いろいろな地域で盛んに行われているけど、難しく考える必要はないと思う。その街に受け継がれたものをきちんと残せばいいのだ。そういうことを松本市や小布施町の例は教えてくれる。

(081114 第75回)

 

 

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