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金婚式のお祝い

2008.11.05

 両親の金婚式を祝して、息子4人で板室温泉へ招待した。

 金婚式ということは、結婚してから50年ということ。よくもまあ離婚しないで頑張ったね、とまずは母親をねぎらった。

 6人でテーブルを囲んでビールを飲み始めた時だった。いきなり父親が立ち上がり、「本日はこのような素晴らしい席に招待していただき、ありがとうございます。親としてこんなに嬉しいことはありません。みんながそれぞれ幸せでいることが親にとっては一番ありがたいことです。本当に今日はありがとうございます」と言って、涙ぐみながら頭を下げたのを見て、虚を突かれたというか、もちろん嬉しかったのだが、なんとなく複雑な心境だった。あの頑固オヤジがこんな殊勝なことを言って……、とジーンとくるやら、歳をとったなあとあらためて感じるやら。年月というものは、人を丸くするらしい。

 食事の時、あらためてこの家族は古風だな、と思った。私は4人兄弟の長男。以下、4歳ずつ離れているのだが、長幼の序列がはっきりしている。私のすぐ下の弟は三男坊にえらそうな物言いをするし、三男坊は末っ子坊主にえらそうな物言いをする。もちろん、私は3人の弟にえらそうな物言いをする。

「おい、末っ子坊主、みんなにご飯をよそってくれ」

 すると、末っ子坊主がかいがいしくみんなのご飯をよそるという具合。

「まだ社会人になったばかりの、手取りが10万円くらいの頃に毎月1万円の図書券をおまえに送るのはけっこうハードだったよ」と昔話を持ち出し、恩着せがましくすぐ下の弟を牽制する。

「いやあ、あの時は本当にありがたかったよ」と次男坊。

 そして形勢不利とみたのか、その下の弟に「おまえはあの時、オレの○○を勝手に売ってしまっただろ」と矛先を向ける。すると恐縮した三男坊が末っ子坊主に向かって、またえらそうに何か言う。

 そういう会話がとても自然で心地良いのだ。もちろん、誰も不満に思っていない。兄は弟の面倒をみ、弟は兄に従う。シンプルでとてもスッキリしている。

 そして、4人の息子に共通しているのは、とても母親をいたわっていることだ。父は超がつくくらい頑固者、母は超がつくくらい優しい。4人ともそういう愛情をたっぷり受けたから、母が喜ぶことなら何でもしそうな勢いだ。そこがまた古風でいい。

「考えてみたら、おふくろは紅一点だね。お風呂の時、寂しくない?」

「そうだね、寂しいね」

「じゃあ、いっしょに入ろうか」

 そんなバカなことを言っても、ずっと笑顔を返してくれる。

 思えば、母はいつ会っても100%誉めてくれる。会った時と別れる時は「いつもありがとう」と言って、必ず頭を下げてくれる。

 今まで当たり前だと思っていたそういう母の態度に、あらためて感謝の気持ちがわいてくるのである。

(081105 第74回 写真は、両親と4人兄弟 )

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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