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紺碧の将

鶴岡で〝ヘンな人〟に会った

2016.10.01

%e5%b1%b1%e6%be%a4%e6%b8%85%e3%81%95%e3%82%93 湯殿山へ行く前日、1年ぶりにアルケッチャーノへ行った。奥田シェフは不在だったが、相変わらず遠来の客ばかりだった。

 奥田シェフは庄内地方を名実ともに「食の都」にした功労者だが、そうなりえたのは同地域が豊かな食材に恵まれているからだ。山の幸・海の幸ともに種類が豊富で、かつて日本中のあちこちにあったものの今では消えてしまったような野菜もたくさんある。
 しかし、それはただの偶然ではなさそうだ。その背景には一人の人物がいる。
 山澤清。奥田シェフの師匠でもあり、日本の固定種・固有種の種継ぎをしている〝農の奇人〟ともいえる人だ。
 アルケッチャーノを出るとき、山澤さんの「大日本伝承野菜研究所」を教えてもらい、向かった。アポをとっていなかったが、幸運にも山澤さんは外出先から戻ってくるところだった。
 突然の来訪にもかかわらず歓迎してくれ、会った瞬間、われわれ(奧山秀朗さん=『Japanist』の経営パートナー)と彼は意気投合し、その後、機関銃のように話を「聞かされた」。
 すごいパワーだった。いきなり「俺はキチガイだから」を連発する。はじめのころは山形訛りがきつく、3分の2くらいしか聞き取れなかったが、そのうちだいたいわかるようになった。耳の順応力はすごいものである。
 山澤さんの仕事はじつに長い時間を要する。絶滅しかかっている種類も含め、日本中の固有種(野菜など)の種を集め、何年もかけて種を継いでいる。鳩の生産では日本随一、無農薬・無化学肥料の野菜とハーブを生産し、それらによる化粧品なども販売している。
%e5%b1%b1%e6%be%a4%e3%83%8f%e3%82%a6%e3%82%b9 話を聞けば聞くほど、彼が生態系の仕組みに通暁していることがわかった。学者の比ではない。ほとんどが現場で学んだものだから、現実との辻褄が合っている。
 栽培用の巨大なハウスの片隅には、洋書がずらりと並んでいる(蔦性の植物の葉っぱに隠れていたが)。日本にまだ「種取り」の専門書がなかった頃、海外から取り寄せたらしい。自らをキチガイと言うが、相当な勉強家だ。
 アルケッチャーノがまだ無名だった頃、奥田シェフは苦境にあえいでいたが、半年間、鳩を無償で提供したことは有名な話だ。奥田シェフの料理をひとくち食べ、よくない時は、ひとことも言わずそれ以上口にしなかった。なぜ良くないか、自分で考えろ、と。まさに「師匠」である。

 正直に打ち明ければ、私は人間があまり好きではない。自分も含め、人間のバカさかげんにはほとほと呆れている。先日も電車の中でホリエモンの健康に関する新刊のポスターを見て、国宝級のバカもんだなあと思った。わが家のうーにゃんの方がはるかに利発だ。
 しかし、だからこそ本来の人間のありようを模索し、実践する人をリスペクトせずにはいられない。つまり、現代の尺度で測って、人間らしくない人が好きなのである。山澤さんはその典型だろう。そして、そういう人は本人も言っているように、この社会では〝ヘン〟となる。
「食の都」の背景に山澤清あり。それが明瞭にわかった。
 また、〝ヘンな人〟に会いたい。
やまざわストーリー http://audrey-inter.com/story/
(161001 第668回 写真上は山澤清さん。下は大日本伝承野菜研究所のハウス。ネーミングが素晴らしい!)

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