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ココロバエ
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美日常を絵に描いたような人

2008.09.18

 今、生きているなかで、何がいちばん愉しいだろうかと考える。日々、愉しいことだらけで、嫌だなという日は一日もないが、では、いったい自分は何を愉しんでいるのだろうか、と。

 正直、物欲はゼロに等しい。こんな家に住んでみたい、こんなクルマに乗ってみたい、こういうモノが欲しいというようなものは、ほとんど体験してしまった。目の玉がハートになるくらい美味しいものもたくさん食べたし、「極上」と言われるリゾートにも何度も行った。だから、これが猛烈に欲しい! とか、こういうことをしたい! というような欲望がほとんどなくなってしまった。もとより、シンプルな生き方が粋と思っているので、贅沢なものへの憧れも少ない。ある意味、困ったものである。生命力はたぎるような欲望とセットでもあるのだから。

 と書くと、自慢しているように思われるかもしれないが、けっしてそうではない。22年近く会社経営をしてきて、それなりに苦労もあったが、それと引き替えにいろいろ体験させてもらったというだけのことである。

 話は戻る、今、私は何が愉しいのだろうか。あれこれと考えた。結果、二つのことに思い至った。

 まずは、自分の波長に合う人と出会うこと、そして、自分の仕事が人の心を動かすこと。

 

 先日、小布施に行った。文屋という出版業を営んでいる木下豊さんに会うためだ。

 清々しい人だった。会えて嬉しかった。これが今の私の愉しさなのだなと再認識した。

 木下さんは小布施という素晴らしい地に根をはり、静かで美しい生活をおくっている。「美日常」がキーワードらしいが、まさにその言葉がピッタリと重なり合うような人である。

 くしくも私と同年齢。同業と言ってもいい。しかし、手法は私とかなり異なる。

 まず、社員を抱えず、個人で出版業を営んでいる。事務所は自宅の一角だ。さらに、自給自足できるくらいの農業も営んでいる。約1,500坪の農地に、米、栗、リンゴ、梨、プルーンなどを栽培し、米の備蓄は3〜4年ほどもあるという。聞けば、一日の睡眠時間は6時間程度だという。だからこそできるライフスタイルでもあるだろう。たくさん眠らなければ、とたんに動きが鈍ってしまう私とはえらい違いだ。

 本業の出版業は10年で15冊。中には14刷も重ねたベストセラーもある。1年で1. 5冊のペース。世の中のサラリーマンや出版業に従事している人が聞いたら、さぞや地団駄踏むにちがいない。「オレもそんな生き方が夢だったんだ」と。

 木下さんから送っていただいた本の中に、若き炭焼き師・原伸介さんの本があった。ガツーンときた。この人、若いけど、まるで哲学者……。中田宏のときと同じで、絶対この人を紹介しなければならないという変な使命感に駆られた。それもこれも木下さんとのご縁からである。

 世の中に、自分の波長に合う人はどれほどいるのだろう。いろいろと出会いを重ねていけるのも、ひとえに『fooga』のおかげ。本当にありがたい雑誌である。

(080918 第67回 写真は自宅の仕事場での木下さん )

 

 

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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