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紺碧の将

スズメノカタビラに見る、生き残りの秘訣

2015.08.26

スズメノカタビラ1 宇都宮の自宅を事務所替わりに使っていることはすでに書いた通りだが、この夏、庭の雑草がすさまじい勢いで伸びた。スタッフたちに草むしりをしてほしいとは言えないので、先日、慣れない草むしりをした。

 一種類だけ、驚異的な繁殖を見せている雑草があった。そこにどんな植物が生えていようと、日当たりが良かろうが日陰だろうが、意に介せず茎を伸ばしている。右の写真は2Fのテラスにある鉢植えだが、ほぼこの草に占領されている。蛇足ながら、このテラスは今住んでいるマンションのリビングの2倍近くの広さがある。贅沢な空間だが、洗濯物を干す以外、ほとんど使わなかった。
 さて、この雑草はなんだろう? 
 『身近な雑草の愉快な生き方』(稲垣栄洋著 ちくま文庫)を手に取り、ページを繰る。
 あったあった。これにちがいない。
 スズメノカタビラ。
 同書を読むと、代表的なコスモポリタンの一種だという。熱帯から極寒の地まで、気候条件を選ばずに繁殖しているのだ。
 面白いことが書いてあった。ゴルフ場にはグリーン、ティー、フェアウェイ、ラフなど、高さの異なる芝がある。それぞれの場所からスズメノカタビラを採取して同じ条件のもとに育てるとする。すると、同じスズメノカタビラであるにもかかわらず、穂をつける高さが異なるというのだ。
スズメノカタビラ2 グリーンから採ってきたものが最も低い位置に穂をつける。ご存知のように、グリーンは芝刈り機で頻繁に刈られる場所だ。次いで高い位置に穂をつけるのはティーから採ってきたもの。そして、フェアウェイ、ラフと続く。つまり、その場所で生き残れるよう、穂をつける位置を微妙に変えているのだ。
 なんと賢いのだろう! その環境に応じて臨機応変に変えられる柔軟な対応力。これこそがコスモポリタンとして世界中で繁殖する最大の武器だったのだ。われわれ人間にとっても、ヒントになる生き方だ。
 昭和天皇は「雑草という草はない」とおっしゃられた。本当にそうだと思う。
 今回、慣れない仕事で腰が痛くなったが、内心ではスズメノカタビラに尊崇の念を抱きながらの作業であった。
(150826 第574回)

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