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紺碧の将

無責任な大人たち

2015.07.31

 安保法案に関する議論を聞いていると、日本人でいることが恥ずかしくなる。それほどに無責任な発言が巷を賑わしている。

 いちばんいい例が、ある週刊誌の記事だ。安保法案に反対する記事があったかと思うと、尖閣諸島で横暴にふるまう中国に対して批判する記事がある。もちろん、私は週刊誌を買っているわけではない。新聞広告の見出しにそう書いてある。
 いったい、どっちなんだ? と訊きたい。自国だけで国を守れないから集団的自衛権をしっかり定めようという法案に反対しながら、中国にやられ放題の現状に対して怒りの声をあげている。結局、「反対する」ことに意義を見出しているのだろう。反対ののろしを上げた方が販売部数が増えるからだ。
 こういう人には、自称・良識派が多い。
 安保法案=戦争をする、という共産党のプロパガンダを鵜呑みにしている人が多いが、共産党も民主党もなんら代案を示していない。ある法案に対して、反対の意見を述べることは自由だが、代案を示さず、ただただ「反対」と主張するのはまっとうな大人のすることではない。私に言わせれば、無責任の極みである。
 PKO法案の時、「戦争になる」と騒いだ人たちがいた。その後、日本は戦争をしているだろうか。特定秘密保護法案の時も、「映画が作れなくなる」と騒いだ人たちがいた。いま、ほんとうに映画をつくれないの? 自由に出版ができないの? と訊きたい。国の安全に係わる重要な機密事項が漏れ放題という状況を修正しようというのが特定秘密保護法だ。
 あまり知られていないが、自衛隊幹部のうち、数十人が中国人を妻にしているという。ハニートラップの可能性が高いと見て、おかしくはない。もし、重要機密の一部でも洩れてしまったら、国の安全を脅かすことになる。しかし、日本には情報漏洩に対する罰則規定すらなかった。筒抜けになることがわかっている国に、同盟国といえど、情報を提供したいと思うだろうか。
 あの時も、戦前の治安維持法を引き合いに出し、恐怖感を煽った人たちがいたが、その後、責任をとっているだろうか。
 つくづく、「60年安保の時とおんなじだ!」と思う。あの時もソ連のコミンテルンや日本共産党に煽られ、わけもわからずデモ活動をしていた人がたくさんいた。実際、60年安保改定がどういうものか、きちんと説明できた日本人はほとんどいなかっただろう。それまで片務性の強かった日米安保を苦労の末、双務性のある条約に変えることに成功したのだ。だからこそ、その後、在日米軍が日本の防衛義務を負い、それによって日本はこれまで戦争をせずに済んでいる。けっして平和憲法があるから戦争を避けられたわけではない。体を張って法案を通した岸信介首相(当時)は戦後日本の最大の貢献者と言ってもいい。
 安保法案に反対するのは自由だ。100%正しい政治がないのと同様、100%正しい安全保障案もない。
 特に、日本の防衛に関係ない、アメリカの戦争に巻き込まれるのは、断固阻止しなければいけない。だからこそ、さまざまな事案に対し、集団的自衛権を行使するか否かという議論は徹底して尽くすべきだ。反対は自由だが、一方で「自分ならこういう方法がいいと思う」という代案を示すことは最低限の義務ではないのか。
 「戦争反対に代案は要らない」と嘯いた人がいる。ここまでくると、あまりの思考停止ぶりに開いた口がふさがらない。
 戦争をしたい人なんかいない。特に日本人はすべてといっていいくらい、戦争はまっぴらだと思っている。もちろん、私もである。
 しかし、もし戦争を仕掛けられた場合、どうするのか、というのが今回の法案の根本だ。日本の周りを見ればわかるが、中国、北朝鮮、ロシア、韓国とさまざまな問題を抱えている国ばかりだ。虎視眈々と領土拡張や恐喝外交を繰り返す国が、現に周りにいるのだ。そういう脅威に対し、最低限の備えをすることは当然のことだろう。
 自衛隊を違憲状態にしておくのも大きな問題だ。
 「え? 自衛隊は合憲じゃないの?」と言う人もいるだろうが、あれは言葉の解釈を強烈にねじ曲げて、無理矢理、合憲としているだけで、違憲状態であるのは隠しようがない。「戦力はこれを保持しない」と憲法に明記されているのだから。自衛隊はどう見ても戦力であり、それによって日本の安全が保たれているのは明らかな事実だ。
 それをきちんと認めていないのが、われわれ日本人だ。彼らは、いったん有事となれば、命を賭ける。ひどい災害があっても、身を張って国民を助ける。そんな彼らに対し、いつまでも「憲法違反」の状態にしておいていいのだろうか。こんな詐欺まがいのことを続けている日本の大人は、子供たちに胸を張れるのだろうか。
 ほんとうに大丈夫なのか、日本人。もう「自分だけいい人」はやめて、しっかり現実を見ようよ。
(150731 第568回)

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