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紺碧の将

椿座で知の世界に酔いしれて

2008.03.30

 椿座という文化サロンに出かけた。

 場所は世田谷にある北山ひとみさんの別邸「梅寿庵」。田園都市線の桜新町駅で降り、満開になっている深沢の桜並木を15分ほど歩くと、目指す場所に着く。周りは静かな佇まいの豪邸が多いが、その中でもひときわ異彩を放つ日本風の家屋がそれ。まるで、「そこだけ京都」という佇まいで、長い枝を重そうにしならせた老梅が主役となった庭は、まさしく都会のオアシスといっていい。

 サロンのテーマは、日本の歴史。それぞれの時代のキーパーソンを取り上げながら、日本の歴史を古代から追ってくるというシリーズの第4回目で、今回は幕末・明治、私がもっとも興味のある時代でもある。

 語り部は「知の巨人」という形容そのものといえる松岡正剛氏、ナビゲーターは資生堂の名誉会長・福原義春氏。ふたりの語りを3時間以上にわたって、ひたすら聞き続けるというサロンである。参加者は約30人、それぞれの分野で活躍されている、いわゆる「ひとかどの」人ばかりである。どうしてその中に私が入っているのか、本人もわからない。

 前々回もそうだったが、今回も時間を忘れて聞き惚れた。岩倉具視が明治維新で果たした役割の大きさに再認識させられたし、空海という坊さんの偉大さもわかった。日本人がどうして視察旅行が好きなのかも、チベットが中国に蹂躙されても日本の仏教界はなんら発言できない理由もわかった。

 松岡さんも福原さんも、ただモノを知っているという人ではない。膨大な知識の上に、自分なりの考察をまぶしている。だから、学校の講義のように退屈な話ではない。知性を磨くというのはこういうことか、と唸らされるのだ。

 途中の休憩には和菓子が、終了後には桜の花びらが散りばめられた濁り酒と春をイメージした弁当が供された。いつもながら、北山さんの演出はパーフェクトである。いったい、北山さんの感性はどうなっているんだ! とクレームをつけたくもなる。二期倶楽部も册も自宅も別邸も、それぞれに完成された空間で、非のうちどこがない。ちょっとはスキを作ってくださいよ、と言いたくもなる。しかし、北山さんはスキを作らないと思う。なぜなら、ダサイことが死ぬほど嫌いなのだから。

 しかし、ご本人はいたって愛嬌があり、自分が積み上げてきた「成果」との間には微妙な差異があるというのも事実。そのあたりは『fooga』の特集でも表現したつもりだが、それがまた魅力にもなっている。だからこそ、北山さんの周りには同じような波動をもった人たちがわんさと集まるのだろう。

(080330 第42回 写真は語り始める前の松岡正剛氏 )

 

 

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