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紺碧の将

つくり手に、森を選んだウイスキー。

2014.11.08

白州蒸溜所 山梨県北杜市にある「サントリー白州蒸留所」を訪ねた。その名の通り、「白州」というシングルモルトウイスキーを蒸留しているところである。

 サントリーは私にとってすこぶる企業イメージがいい。サントリーホールやサントリー美術館で馴染みがあるのと、優れたウイスキーをつくっていること、抜群のセンスで広告を文化に高めたことなど、文化企業の最たるものだと思っている。そういえば、開高健もサントリー出身だった。サントリー出身の文化人は他にも何人かいる。
 ちなみに、私がなんとなく抱いている企業イメージは下記のように分類できる。
■利用しないし共感もできない企業/マクドナルド、任天堂、朝日新聞、ジャパネット高田、ドンキホーテ、ダイソー、ゼンショー
■ときどき利用するが共感できない企業/ユニクロ、楽天、ソフトバンク、岩波書店
■利用しないが共感できる企業/パタゴニア、ヴァージン航空
■利用しているし共感もできる企業/アップル、アルファロメオ、サントリー
 ぱっと思いつくままに書いたので、他にももっと名を連ねることができる。要するに、サント樽リーという会社に抱いているイメージはいいということだ。会社の実態を詳しく知れば、ちがったイメージを抱くようになるとは思うが、現段階の話である。
 ちなみに、サントリーは「好きなことをやるために」上場しないことを貫いてきた会社であるが、今年7月、子会社のサントリー食品インターナショナルの株式を東証1部に上場した。海外事業の拡大につれ、従来の社債発行や銀行借り入れでは資金調達がままならなくなったとみられている。実際、そうなのだろう。
 しかし、その方法はいかにもサントリーらしい。親会社(HD)は非上場のまま、子会社を上場させたのだ。従来通り、経営の自由度を保つことが目的だと思うが、そのようなケースは東証でも全体のわずか1%に過ぎないという。しかも、その大半は時価総額が100億円未満の会社で、サントリーHDのような規模の大きな会社がそのような手法を採用するのはきわめて稀らしい。
 さて、森のなかの蒸留所だった。これが感動の連続だった。秋が深まりかけているという季節が良かったというのもあるだろう。広大な森はじつに美しく人の手が入り、駐車場から蒸留所までの道もよく整備されている。
 サントリーの歴史を展示した博物館の隣に併設されたショップの入り口に大きなポスターが掲げられており、そのコピーが「つくり手に、森を選んだウイスキー。」とある。なんと言い得て妙なのかと感嘆する。深い森の懐に蒸留所があるという写真構成もいい。ウイスキーはもちろん人がつくっているわけだが、むしろ森が主役だと言っているのだ。それは、実際にガイドツアーに参加し、どのように蒸留されているかをつぶさに見学するとわかる。まさしく、自然の営みと人間の心が渾然一体となってはじめてあの「森の精霊」たる滴が生まれてくるのだ。
 ところで、サントリーのもうひとつの蒸留所、京都の山崎蒸留所でつくっている「山崎シェリーカスク2013」が世界最高のウイスキーに選出されたとの報が入った。英国の著名なガイドブック『ウイスキー・バイブル』2015年版が選出した。
 日本のウイスキーが最高賞に選ばれたのは初めて。「ほとんど言葉にできない味わい」とか「極上の大胆な香り」などと称賛され、100点満点中の97.5点を獲得した。
白州 もともと私はウイスキー好きだったが、このところ日本酒(純米酒)ばかりを飲んでいた。が、最近、ウイスキー復活である。日本酒も純米しか飲まないように、ウイスキーもシングルモルト、あるいはそれらをブレンドしたものしか飲まない。翌日に残るし、そもそも美味しくない。酒はあくまでも嗜好品だから、美味しいと思えないものをあえて飲む必要はない。
 それともうひとつ理由がある。ボトルのデザインがいいのだ。特にサントリーのボトルのデザインは秀逸だ。「山崎」「白州」「響」……。どれも一流のアーティストを用いて丹念につくったことが一目瞭然だ。ひるがえって、日本酒のボトルのラベルはどうにかならないものかと憤慨する。ダサいにもほどがある、と。日本酒の酒蔵は経営規模が小さいのでやむをえない事情もあると思うが、もう少し工夫できると思う。なんなら私にまかせてくれないか(と営業する)。ま、冗談はともかく、いいデザインを眺めながらちびりちびりと舌で味わい、いい音楽を聴いたりいい本を読む。あるいは禅語の意味を深める。そんなことが、なんと至福の時間かとあらためて思う。
(141108 第530回 写真上は博物館の正面、中は蒸留中の樽、下は「白州」)

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