多樂スパイス

米沢市の誇り

2008.03.23

 ついに宇都宮市のシンボル的存在である二荒山神社の隣に建設予定の高層マンションが着工に向けて動き出した。栃木県が権利変換計画を認可したのだ。4月にもすべての建物明け渡しが完了、5月には取り壊しが始まり、秋頃には基礎工事が始まるらしい。

 どうか、こんなバカな計画は白紙に戻してほしいと願っていたが、どうやら世紀の愚行はこのまま進んでしまうらしい。事業取り消しを求めて県を訴えている原告団の一人として、とても残念である。

 どうして、このような事態になってしまったのか。実に安易な道を選んでしまった。国や県の莫大な補助金を得て高層マンションを造るという、限りなく空虚な道を。この計画によって大きな利益を受けるのは誰か、そしてこの計画を推進した張本人は誰か、後世の宇都宮市民が判断できるよう、きちんと記録を残してほしいものだ。

 今でも解せないのは、あそこに高層マンションを造れば街が活性化すると考えている人がいることだ。不思議でならない。

 高層マンションは、景観を損ねることは言うに及ばず、致命的なことは街のもっとも重要な場所に地権者を増やしてしまうということ。マンションを分譲するということはそういうことだ。もう、あの場所はどうにもできない。

 そんな宇都宮の愚行によってブルーになっていた時、米沢の上杉神社を思い出した。上杉神社に限らず、各地にあるシンボル的存在は敬意をはらわれ、住民に愛着を持たれるのが常識だと思うが、最近訪れたところでは上杉神社が印象に残っている。

 ご存知、上杉神社は上杉謙信はじめ、2代目景勝や米沢藩中興の名君・上杉鷹山を合祀した神社であるが、その保存のされ方は敬意に値する。社そのものがきれいになっているのはもちろんのこと、周囲にその社の威厳を脅かす建物はいっさいない。住民が自分たちの精神的シンボルをいかに大切にしているか、思い知らされるのだ。

 結局、自分が住む街を愛せるかどうかは、人口が多いとか少ないという問題ではない。その街の歴史が大切にされ、原風景がきちんと大切にされ、残されているかどうかだと思う。

 宇都宮の二荒山神社界隈の景観はその高層マンションが完成するにしたがって、一変するだろう。多くの市民は、それによって故郷を喪失することになる。

 ところで、上杉神社の宝物殿には上杉謙信の遺品が数多く展示されていて、謙信ファンならずとも大いに唸らされるのだが、元々上杉謙信は越後の武将。それが会津を経て、今や米沢にある。歴史の綾というものは、実におもしろい。

(080323 第41回  写真は謙信の軍旗、毘沙門天のマーク)

 

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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