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紺碧の将

ギャラリー册への道

2008.03.15

 去る3月4日、九段のホテル・グランドパレス最上階にあるクラウン・ラウンジで船村徹氏への取材を行った。その前の週、船村先生生誕の地・船生(ふにゅうと読む)の民宿で1回目の取材を行ったが、一週間と間をおかず、2度目の取材となった。以前、この欄で書いた通り、日本への熱いメッセージを一冊の本にしたためようと始まったのである。

 約束の時間に少し間があったので、千鳥が淵を散歩することにした。私にとって、東京でもっとも落ち着くところは、そこにほかならない。メトロの九段下駅を出て、武道館の入口を横目に歩きながら思う。若い頃はよく来たな…。エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、イーグルス、ピーター・ガブリエル、ドゥービー・ブラザーズ……。武道館の入口を見ると、反射的にあの当時の興奮が甦る。湯気がたつくらい、熱狂的なロック青年だった。それが今、演歌の大御所の本を出そうというわけだから、世の中おもしろい。

 千鳥が淵は桜の開花期が素晴らしいのは言わずもがなだが、私は桜が咲いていない季節も好きだ。お堀に沿って歩くと、桜の骨格がはっきり見える。ごつごつと醜い肌をさらし、枝をお堀の水に向かって伸ばしている。まるで巨大な老人が対岸の北の丸公園に向かって、腕を差し出しているかのように見える。桜の季節だと、周りは人ばかりで、そのユーモラスな姿をゆっくり見ることはできないが、まだ開花する前なら見放題だ。

 堀り沿いの道を進むと、右手にギャラリー册がある。二期倶楽部の北山ひとみさんがお持ちのギャラリー&ブックス&カフェだ。作家の松岡正剛氏がセレクトした本を中心に約1万冊が並ぶ、まさに本の桃源郷。インテリアは本のためにしつらえられており、まごうかたなき本が主役の空間だ。奥にはカフェが併設されているが、スタッフの方に、一日どれくらいの人がここを利用しますかと訊ねると、3人くらいでしょうか、と答える。コーヒー一杯900円だとして、合計2,700円。本を販売しているわけではないので、それ以外の売上はほとんど無きに等しいと言えるだろう。

 最高の道楽です。

 本好きの私にとって、「册」はまさに理想の空間。それをいともさりげなく作ってしまった北山ひとみさんて、いったい……ということになる。やりたい放題である。

 最近、このブログの話題は北原照久、北山ひとみ、中田宏、船村徹、西原金蔵、ワサブロー、てんつくマン…と全国区の人ばかりになってしまったが、気がついたらそういう方たちと仕事をするようになっていた。ロック少年も変われば変わるものだ。

 と書くと、今はクラシック一辺倒なのかと思われそうだが、今でもロックは大好きで、近所迷惑顧みず、大音量で好きなロックを流している。

(080315 第40回 写真は千鳥が淵の桜 )

 

 

 

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