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紺碧の将

なんちゃってカントリージェントルマン

2014.02.04

マントルピース 『Japanist』第15号で紹介した植物細密画家・野村陽子さんの画集制作がスタートした。まだ、明かせないが、化粧箱は他に類例のない形で、かなりの豪華本になる予定だ。

 先日、400点以上の撮影が行われた。カメラマンはご存知、森日出夫氏。場所は、伊那食品工業の敷地内にある「野村陽子植物細密画館」。撮影最終日に慰労会も兼ねた食事会が催されるので、「ちょうど撮影が終わる頃」を見計らって伊那まで行くことにした。

 私の愛車では雪深い伊那までたどり着くことはできないと思い、電車で行こうとしたら、陽子氏の夫でマネージャーでプロデューサーでヒモ(※本人談)の由紀夫氏が「新宿からバスが出ているので、それがいちばん楽でいいですよ」と教えてくれた。ちなみに、由紀夫氏はジョー・ペシ似のイケメンオヤジである。

 調べてみると、頷けた。3時間強の所要時間で料金は3000円くらいだった。

 ところが、走り始めて、意外な展開になった。なんと、運転手が居眠りをしていたのだ。途中、何度もフラフラし、いきなりハンドルを戻したりする。一瞬、数年前の高速バス事故を思い出した。

 途中休憩のサービスエリアで紛糾した。乗客の何人かが運転手に激しく抗議し、ここで降りると言う。そりゃ、そうだ。命がかかっている。私はといえば、そういう人が運転するバスに乗ってしまったのも何かの因果かとあきらめ、そのまま乗ることにした。さすがの居眠りさんもあれだけ罵倒されたら少しは目が覚めるだろうという思いもあった。

 それはそれとして、翌日、野村さん宅に泊めていただいた。清里の山はずれにある素敵な住まいである。取材した当時は携帯電話が通じなかったが、今回は通じることがわかった。家の前には家庭菜園や家庭田んぼがある。暖房は薪。ジョー・ペシ氏が手慣れた動作で火をおこす。暖炉の火は、エアコンのそれとはまったくちがう。とにかく体の芯まで熱が伝わってくる。

 結局、われわれ3人は、午後3時から深夜12時くらいまでずっと喋りっぱなしだった。「マイナスとマイナスをかけるとどうしてプラスになるのか」「シブイ男の定義とは」「モーツァルトの『魔笛』に出てくる夜の女王の歌は誰が一番いいか」「シカのさばき方は」など、テーマはめまぐるしく変遷する。時折、まじめに仕事の話をし、時折互いのいい加減な人生を披露しあう。

 それにしても、野村夫妻は現代の日本では希有といってもいいくらい、個性的なカントリージェントルライフを実現している。奥さんは好きな絵を描き、ペシ氏は野菜やコメを作り、それでていねいに料理をする。彼らは一枚も絵を売らずに「自分たちがやりたいことだけ」をやっているのだ。日本全国でスケッチができるように、それ用の車も調達した。

 

 「コイツは結婚以来、怒ったことがないんですよ」と前置きしながら問題発言を続けるジョー・ペシ氏。

 それを聞いた陽子さんはペシ氏のお尻をペシペシ叩いてお仕置きをするのかと思いきや、まったく意に介さず、いつもニコニコと笑っている。まさに福を呼ぶカミサンである。

 人生を愉しむお手本を、その画集に盛り込もうと思っている。

(140204 第484回 写真は野村家のマントルピース)

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