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紺碧の将

悠々として急げ

2013.04.27

高知の山

 前回のブログで、「ジワジワ」がいいと書いた。すぐに結果が出ることを望んでいない、と。

 そう書くと、のんびりと仕事をしているととられるかもしれない。

 ところが、さにあらず。詳細を書くのは野暮なのでやめるが、上から見ても下から見ても斜めから見ても太陽に透かして見ても商業臭のない定期刊行物を発行し続けるのは、そう簡単ではない。その証拠に、全国広しといえど、誰も『Japanist』のような雑誌をつくろうとは思わない。

 「そういう雑誌づくりにトライしてみようと思うんです」と言う人がいたら、即座に「やめなさい」と忠告するだろう。かといって、お金に余裕のある人がつくってもまったく違うものになるのは火を見るより明らか。じゃあ、どうすればいいんだよ! と怒る人がいるかもしれないが、つまるところ「見た目ほど簡単ではないよ」ということだ。

 「悠々として急げ」という言葉がある。緊張感をもってスピーディーに事をやり続けているのだが、心の中は泰然自若。周囲の人に焦りを感じさせない。そんな風に続けるためには、これしかない。「一期一会」。

 五十の大台を越え、数年過ぎた今、いつまでも時間があるとは思っていない。「百歳まで現役」と公言しているが、それは自分の細胞や無意識の意識にそう思わせようとしているまでのこと。それが実現できるかどうかは定かではない。また、人の命に限りがあるのと同じように、すべての物事にも限りがある。ジョージ・ハリスンが言ったように、All things must pass.だ。

 私はいつも一期一会のつもりで仕事にあたっている。とにかく、目の前の仕事に集中すること。今行っている仕事の質を少しでも高くしたい。ただ、それだけ。いいか悪いかわからないが、今月の売り上げを考えて仕事をしていない。

 例えていえば、400メートル走をつないでマラソンを走るということ。瞬間的に最も苦しい陸上競技は400メートル走だと言われているが、それをつないでフルマラソンを走ろうというのは、お利口さんのやることではない。でも、一期一会というのは、本来そういうものだと思う。『Japanist』は趣味でもビジネスでもないし、もちろん道楽でもない。とにかく、目の前のひとつひとつに集中すること。

 『Japanist』だけではない。その他、私が携わっている仕事のすべてをそのような境地で行いたい。それがまた、社会を良くすることのひとつだと信じている。

(130427 第419回 写真は牧野富太郎記念館から見た山々)

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