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紺碧の将

濃密で清冽な空間を共有する

2013.03.22

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 『Japanist』という媒体をもとに、さまざまな人が交差している。編集者・執筆者・掲載された人たち、サポーター、そして愛読者……。そういう人たちがリアル空間で集うという試みが「ジャパニストの集い」の主旨であるが、去る3月15日、その第3回目が神楽サロン(新宿区市谷田町)で開催された。

 今回は、ミネハハさんの歌で幕を開けた。3,000曲以上のCMソングを歌い、「CMソングの女王」と呼ばれていた方だが、たった一人でアフリカを3ヶ月旅したことをきっかけに、「自分のためではなく、人のために歌う」と決意。その後は年間100回前後のコンサートをこなしながら、オリジナルや日本の歌曲などを精力的に歌っている。理屈抜きでハートに刺さってくる透き通った歌声に多くの方が涙、涙、涙……。

 メインのゲストは我が師・田口佳史先生をお迎えした。

 第1部は、私が先生にインタビュー。25歳のときの壮絶な瀕死の重傷からいかに人生の軌道をつくられたのか、『老子』ほか東洋思想からどのような影響を受けたのか、学びと愉快な人生について等、お聞きしたいことは山ほどあったが、半分くらいしかお聞きできなかった。途中、田口先生と出会った頃のことを思い出したら、不覚にもこみあげてくるものがあって、失態をさらしそうになった。ようやく人生の師に出会えた歓びと〝そうだ、この方の下で学ぼう〟と思ったあの時の決意がまざまざと甦ってきたからだ。

 もとより、世の中の表層的なことが嫌いで、合理的な仕組みもお手軽なハウツーものも一時の流行も嫌いだった。そういう人間にとって、田口先生のなさっていることはまさしく本質そのものだった。初めて得体の知れない電流が体を走った。あれから4年弱。私はほんとうに大切なことを学ばせていただいている。

 休憩をはさんで、田口先生の講演。題は、「そもそも日本とはなにか」。時間がおしてしまい、わずか30分だけだったが、さすがは田口先生。地理的特性からくる日本たる所以を簡潔・明瞭に語っていただいた。多くの人が必死になってメモをとっていたのが印象的だった。

 その後、盆栽作家・森前誠二氏に簡単なスピーチをしてもらい、第1部が終了。森前さんの盆栽を3階茶室に展示したのだが、その配置の妙に感心することしきり。横山大観の軸も効いていた。

 森前氏は、若い弟子やスタッフたちが盆栽を売らずに食べていける仕組みをつくろうと、今、ある事業に取り組んでいる。なんとかその方法が定着し、貴重な日本の盆栽が海外に流出しないで済むようになってもらいたい。

 第2部は、場所を3階上に移して、懇親会。おなじみ「結わえる」の料理に純米酒、そして津川清子さんの燻製など、本物を味わいながら、一堂に会した人たちが歓談に花を咲かせていた。

 今、思い返しても不思議だ。どうしてあのように濃密で清々しく、それでいて愉しい空間になるのだろうと。おそらく、居合わせた人たちに邪念がなかったからだと思う。打算や駆け引きなどが鎌首をもたげてくる余地は皆無。皆、無心でその場を楽しんでいる空気が如実に伝わってきた。会が始まり、終わるまではそれなりの労力も要るが、参加者の笑顔を見ていると、それも吹き飛んでしまう。

 それにしても、今回は師をお招きしたためか、相当疲れたようだ。翌日は妙な興奮で早起きし、その翌日は反動もあってか11時間半も眠りこけてしまった。田口先生から「眠っている場合ではない!」とお叱りを受けそうだ。

 「次はいつやるの?」という質問もチラホラあるが、少なくても年内はやらないだろう。来年、時期をみて、企画をたてようと思う。興味のある方は、まず定期購読者になって(それが参加の条件です)、お申し込みください。

 人と人との出会いは、人生を変える。これ、本当です。

(130322 第410回 写真は、田口佳史先生との対談風景)

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