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紺碧の将

日本に生まれた僥倖

2013.01.21

反旗 人間に限らず、生き物というものは不思議だ。体の仕組みは複雑怪奇といっていいほど緻密で、まだまだ解明されていないことの方が多い。宇宙の秩序もそうだ。科学はかなり進歩したと思っている人が多いかもしれないが、ひとつの真理がわかると、それにともなってもっと多くのわからないことが新たに増えてしまうという。

 なぜ、自分が人間に生まれてきたのか、そして、なぜ、日本に生まれたのか、と考えると、これまた不思議だ。もしかしたら、お隣中国に生まれてきてもおかしくはなかった。確率からいえば、そういうことだ。

 でも、そうならなくて良かった。

 そう思わせてくれる本だ。

 『反旗 中国共産党と闘う志士たち』(育鵬社)。戦慄が走り、ときには背筋が寒くなった。

 中国国内で共産党独裁体制に対し、自由と権利を得るための運動をしている人たちを紹介している。数百万人(資料によっては数千万人)が命を奪われたという文化大革命、デモを行う学生たちに無差別水平射撃をくわえ、あげく戦車で轢き殺してしまった天安門事件の頃となんら変わっていない。いや、むしろ残忍さ、狡猾さは以前に増している。外交・国際問題でもあちこちで紛争のタネをばらまいているが、国内での弾圧もそれに劣らず凄まじい。

 少しでも共産党に批判的な言動をすれば、たちどころに密偵を放ち、拉致・逮捕・監禁など、なんでもやる。殴る蹴るで内臓が損傷したり、骨を折られるなど日常茶飯事。場合によっては家族にまで危害が及ぶ。それを知っているから、批判をすることは命がけだ。

 インターネットにより、人民の不満が広く大衆に伝わるというのも、ある意味ではウソ。例えば、北アフリカで起こったジャスミン革命のときは、自国に飛び火するのを怖れ、「ジャスミン」はもちろん、「チュニジア」「エジプト」といった、ジャスミン革命を連想させるキーワードはすべて中国当局の手によって検索できなくされた。

 中国の2011年度国家予算では、国防費7兆5000億円に対し、公安費は7兆8000億円。中国が軍事力を急拡大させていることは明白な事実だが、それを上回る国家予算が国内の「反対分子」を押さえるために使われているのだ。

 さらに驚くことに、この公安費をめぐって政治家や官僚が駆け引きを繰り広げ、既得権益化しているという。つまり、この予算が減らされないよう、実際にはそれほどの反対分子でなくとも無理矢理容疑をでっちあげ、しょっぴいて「自分は反対分子です」と言わせるという。一人を見張るために8人も配置し、24時間3交替で「勤務」することさえあるという。なかには、この「ビジネス」をフランチャイズ化して、全国にチェーン展開している共産党幹部もいるという。こんな国に生まれたら、今頃、私の首はないだろう。

 中国の新聞『南方週末』の新年社説が広東省共産党委員会の指示で強制的に書き換えられた事件は記憶に新しいが、今でも中国のメディアは共産党の思いのまま。とにかく少しでも政権に批判的な情報は抹殺される。

 中国共産党の横暴を書いていたらきりがない。最後に、一人っ子政策に関連して、それを衆知・徹底させるために地方政府が町や村の施設や民家に張り出したスローガンの一部を紹介したい。

 

 「血が川のごとく流れても、産みすぎは許さぬ」(江蘇州)

 「規則に従わないのなら、家族を皆殺しにせよ」(四川省)

 「二人目を許可するくらいなら、おまえの子宮をこすり取る」(貴州省)

 「捕まれば避妊手術をさせる。逃げれば追いかける。自殺したければ縄か毒薬の瓶をやろう」(広東省)

 「殴って、堕ちさせ、流れさせ、頑として産ませない」(湖南省)

 などなど、もっと他にもたくさんある。

 繰り返すが、これらのスローガンは、地方政府がつくったものである。今も昔も、中国の政権担当者にとって人民の命など犬猫のそれと変わらない。まして、人権など毛先ほどの意識もないだろう。

 

 今、チベットで抗議のための焼身自殺が相次いでいる。自分の身を焼いて抗議をするという事実に対して、国際世論はあまりにも冷めすぎてはいないか。そもそもチベットもウイグルも内モンゴルも中国の領土ではない。もちろん、台湾はいまだかつて中国領だったことは一度もない。

(130121 第396回)

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