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紺碧の将

道徳と経済が結びつく時代

2012.12.12

 総人口5万人を切る過疎のまち、島根県益田市に、素晴らしい自動車教習所がある。名実ともに日本一。その名は、Mランド(益田ドライビングスクール=MDSの名でも通っている)。

 先日、創業者・小河二郎氏を取材するため、同所を訪れた。

 なんと、年間約6000人の卒業生を出し(全国平均は1000人前後)、四輪車部門ではここ数年、全国一の座を維持している。85パーセントが県外からの入所者で、沖縄や北海道からもMランドを目指してやってくるという。経営不振を人口減少など、社会的な要因にしている経営者が聞いたら驚くとともに、いったいどういう方法で人を呼び込んでいるのかと思うだろう。

 そこまで多くの若者たちを惹きつけているのには、相応の理由がある。手っ取り早く売り上げを伸ばすための常套手段となっている「安売り」や「特典」などで引き寄せているわけではない。多くの企業がそのような手法に走るが、結局、価格競争に陥り、〝誰も幸せにならない結果〟ばかりが露呈されることとなるが、Mランドは安売りはいっさいしていない。

 では、どのような理由で全国一の自動車教習所になっているのか。

 ひとことでいえば、「新しい自分を発見し、多くの仲間と感動を共有することができる教習所というスタイルを確立したから」といえる。自動車を運転するためには、どのようなことを学ぶ必要があるのかといった本質的なテーマを徹底して究めたからこそたどり着いた方法でもある。

 Mランドでは、教官=教える立場、教習生=教えられる立場という従来の概念をとりはらい、インストラクターとゲストという名前にしている。インストラクターは、ゲストが自動車を運転する上で必要な技術や知識のみならず、人間性や社会性を磨くために奉仕すると位置づけられている。

 例えば、挨拶の励行、トイレ掃除、手紙、お茶、瞑想、自然のなかのウォーキングと続けば、まるで人間修養の場そのものだが、そこに堅苦しさが微塵もないから驚きだ。むしろ、笑顔ばかりが溢れている。若者たちは、強要されたからではなく、その場の〝空気〟に順応して自発的に動いている。

 約2週間の滞在期間が終わり、大勢のインストラクターやゲストたちに見送られながら送迎バスに乗り込むゲストたちのなかには、離れがたくて泣き出す人も少なくないという。

 他に、私が着目したのは、コース内に多くの樹木があったことだ。小河氏には、「空き地があったら木を植えなければいけない」という持論がある。通常、自動車教習所のコースは見晴らしを確保するため、木は伐採されているが、小河氏は公安委員会の「指導」にもかかわらず、コツコツと300本もの木を植えてしまった。そこに、たしかな気骨を感じる。

 また、敷地の周囲は森に囲まれているが、山の頂上に至る道を職員たちで整備し、「無心山」と名付けられた頂上には見晴台やモニュメントが設置されている。若者たちは、教習の合間に仲間たちとともに自然に親しみながら、人生にとって大切なものを学んでいく。

 敷地のあちこちに多くのメッセージが掲げられていることも特筆すべきことだ。そのほとんどは、小河氏による文章。これでもか! というくらい、至るところにある。

 宿泊施設の壁には「Mランドホーム十ノ掟」があるが、その中にはこのような言葉もある。

一、決して弱い者いじめをせず、かつ、どんなときも負けないこと。

一、仲間との連帯を重んじること。

一、男は質実剛健たること、女性はそこに花が咲くように美しくあること。

一、世の中は損得で判断せぬこと。金銭欲、利欲はもっとも卑しむべきもの。

 小学校や中学校の校内にも掲示されるべき内容だろう。「男は質実剛健たること、女性はそこに花が咲くように美しくあること」などとあると、性差を認めない人たちは眉間にたて皺を寄せて憤慨するだろうが、これを読んで反発を感じる方がよほど素直ではない。もちろん、強くたくましい女性がいてもいいのだが(しおらしい男はどうかと思うが)……。

 また、本館前に送迎バスの停留所があるが、そこにも次のような言葉がある。ちなみに停留所の名は「1905・5・27」となっている。

 1905年5月27日は、この近くの日本海において、日本が日露海戦でバルチック艦隊に大勝利した日です。有色人種が、初めて白人に勝ったこの勝利は、その後、100の国が独立を勝ち取るほどの影響を世界に与えました。

 敷地内のレストランでは、スウェーデンから輸入した「トーゴービール」を販売している。もちろん、東郷平八郎の「トーゴー」である。

 この素晴らしい自動車教習所をつくった小河氏は、政治に関して次のように述べておられた。

 「まず、なんといっても戦争を総括し、憲法改正をすることです。そして、自分たちの国は自分たちで守る。それが出発点だと思います」

 ということは、まだまだ日本はスタート地点にも立っていないということ。

 だからこそ安倍さんに憲法改正をぜひとも実行してもらいたい。

 Mランドの経営工夫はその他にもたくさんあるが、詳しくは来年1月25日発売の『Japanist』を。

(121212 第386回 写真はMランドのマークとトイレ掃除風景)

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