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紺碧の将

最近のマイ音楽事情

2012.11.16

 最近のマイ音楽事情を。

 今年の夏は、フランスの歌姫ZAZに首ったけだったと書いた。

 そして、秋の雰囲気が漂い始めると、私の音楽嗜好は一気に落ち着き始めた。特に、あるところでライブ映像を見て一気にダイアナ・クラールへの関心が高まった。カナダはバンクーバー島出身のジャズ・ピアニスト兼シンガーである。それまでもそこそこいいシンガーだと思ってはいたが、特に好きだったわけではなかった。しかし、何かのスイッチが入ってしまったのだろう。CDショップへ行き、買いもらしていた5枚のCDと3枚のDVD(モントレー・ジャズ・フェス、パリ・ライブ、リオ・ライブ)を手に入れ、毎日聴き惚れている。

 ハスキーでしっとりした声と手数が少ないながらもツボを押さえたピアノ、そして美貌。素敵なシンガーである。ぜひ、ライブハウスで聴きたいものだ。

 ところで、20年ぶりくらいにブルーノートに行った。なぜ、20年もご無沙汰だったかといえば、どうにもあの商業臭が鼻について、心底から楽しめなかったのだ。ニューヨークのブルーノートもそう。NYにはいかにも「ジャズ小屋!」というライブハウスがたくさんあるが、ブルーノートは商業臭が強く、小屋というよりショーシアターという雰囲気だ。本物のジャズを聴く雰囲気ではない。東京のブルーノートも思いっきりショーシアター然としているので足が遠のいていたというわけ。

 20年の封印を解いて、行ったその日のパフォーマンスは、THE FLOORETTESというドイツ人3人によるヴォーカル・グループ。“シュープリームスを思わせる” というキャッチコピーに惹かれて行ってしまったのである。

 考えてみれば、ドイツの音楽はバッハ、ベートーヴェン、ブラームスの「3B」によって世界の頂点に立って以来、時代の波に取り残されてきた感がある。フランスにもイタリアにもデンマークにもアイルランドにも、それなりに面白い音楽シーンがあるが、ドイツの動勢はまったく入ってこなかった。

 ということもあり、興味津々だったのだが、フタを開けてみれば、「うー、このレトロチックな衣装と歌い方と曲と振り付けはなんだろう?」という疑問符の連続だった。3人は30歳前後だと思うが、じつに人の良いオバサン然としていて、微笑ましいがまったくインパクトがなかった。最前列に座ったためか、PAのバランスが悪く、ヴォーカルグループなのに声が聞こえず、ブラス・セクションばかりが耳に入ってきた。

 それでもナマの音楽はいいものだ。気がつくと、とても気持ちのいい時間を過ごしていた。

 

 今、クラシック以外で私の魂に響いてくるのは、やはり黒人ものが多い。50年代以降のアトランティックもの、往年のジャズ、そして現代のアフリカもの。セネガルのユッスー・ンドゥール、マリのアビブ・コワテやサリフ・ケイタなど、しなやかで強靱な音楽は他に類がない。

 ともあれ、商業臭がきつくて馴染めなかったブルーノートであるが、ビッグネームの演奏を間近で聴けるというメリットは捨てがたい。近々ロン・カーター、スタンリー・クラーク、リタ・クーリッジ、デヴィッド・サンボーンのライブがある。

 なんだかんだと言いながら、好きな音楽を聴くことができるというのは幸せなことだ。人類が、いつでも好きな音楽を聴くことができるようになったのは、つい最近なのだから。

(121116 第380回 写真はブルーノート東京のエントランス)

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