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紺碧の将

ヴィッキーからの贈りもの

2007.08.24

 「類は友を呼ぶ」という言葉があるが、これだけ多くの人間がいても、同類を嗅ぎ分ける力が人間には備わっているのかもしれない。たとえ、言葉や民族がちがっていても。

 今年、インドを列車で巡る旅をしていた時、アメリカ人作家ヴィッキー・レオン(VICKI LEON)に出会った時もまさしくそうだった。

 ふと、あるポスターが目にとまり、凝視していた。デザインが面白かったからだ。すると、ヴィッキーがつかつかと寄ってきて、「このポスターは面白いわね」と言ったのだった。突然背後から完璧な英語が聞こえたので驚いた。

 私は貧しいボキャブラリーを総動員して、そのポスターのデザインがいかに素晴らしいかを語った。それから1分もたたないうちにうち解け、互いの職業がわかった。彼女はすでに30冊もの著作を世に問うてきた作家。私は広告会社の経営をしていて物書きのはしくれでもあり、雑誌の編集もしている、と。帰国したら互いの著作を交換しようと約束してムンバイで別れた。

 日本語が読めないはずなのに、ヴィッキーは私の著作に感動してくれた。リップサービス分を差し引いたとしても、とても魅力的な賛辞の数々に嬉しくなった。彼女は、「本の美しさ」に魅了されたようなのだ。私の文章を理解しない人が、その「みてくれ」だけで感動してくれるというのは、実は望むところでもあった。デザインは言語を越えられると思っているからだ。デザインは波動という力を生む。だから、ダサイ装丁の本は好きではない。

 そして、猛暑で日本列島が熔けそうなある日、ヴィッキーの新作が届いた。タイトルは『WORKING Ⅸ TO Ⅴ』(9時から5時まで働く)。実はヴィッキーは、UPPITY WOMEN というシリーズものを書いていて、古代ギリシャからローマ、東洋にいたるまで「女性の歴史」ものが得意なのである。

 さーて、辞書を片手にヴィッキーの綴った文章と格闘するとしよう。あの人なつこい笑顔を思い出しながら。

(070824 第5回 写真は、ビビカマクバラーでのヴィッキー・レオン)

 

 

 

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