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紺碧の将

私の上に降る雪は

2012.03.01

 今年は雪が多い。

 とはいっても、ニュースで聞くだけで、実際に私が住んでいるところでたくさん降っているわけではない。なので、まったく実感はない。

 そもそも宇都宮は寒いが、雪はほとんど降らない。週の半分以上を過ごす新宿区界隈もほとんど降らない。だから、豪雪地帯の方には申し訳ないが、“しめやかに降る雪を、あったか〜い部屋で、熱いコーヒーを飲みながら、ワサブローさんの『生ひたちの歌』でも聴きながら、ネコのように眺めていたい“ という願望があった。

 ※『生ひたちの歌』とは、♪私の上に降る雪は 真綿のやうでありました〜 〜私の上に降る雪は いと貞潔でありました♪ という、中原中也の詩をもとに作られたもの。

 

 昨日、未明から正午にかけて、待望の雪が降った。朝起きて、窓から御苑の林を見たとき、いつもとちがった景色に驚いた。白い薄化粧がなんとも美しい。しかも、雪は「しんしん」と音をたて(気のせいだと思うが)、粛々と降り続けている。

 思わず、いつものようにベランダに出た。左馬之助(ケヤキ)たちに挨拶をした後、深呼吸と軽い柔軟運動をするのが日課だからだ。

「寒ッ!」

 気持ちとは裏腹に、腰が引けた。やはり、寒い。あっという間に尻尾を巻いて退散。

 その後、予定があったので、外出した。何度か滑って転びそうになりながら…。

 かくして、願望のようにはいかなかった雪の日であった。

(120301 第322回 写真は、新宿御苑・多樂庵前の雪景)

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