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おてんと様に済まないから

ある百歳までいきたお婆さん

 白洲正子の著書『美しくなるにつれて若くなる』に登場する、あるお婆さんの言葉である。このお婆さん、白洲さんのご近所の方だったそうだが、元はヤクザの娘。世間の風当たりも強く、気苦労も絶えなかったのだろうと、本にあった。
 
「おてんと様が見ている」
 そう言われつづけてきたころは、人の心も温かかった。
 おてんと様のぬくもりが、そのまま人のぬくもりだったのだろう。
 食べるものはもちろん、着るもの、住むところなど、塵ひとつでさえ、「おかげさま」の心があったような気がする。
 
 今は、おてんと様ではない。
「AIに見られている」
 だからだろうか、低体温症の人も増えているし、人の心も冷たくなっているような。
 
 それに呼応してか、モノも溢れかえる世の中に。
 とりわけ、廃棄される食べ物の多さに胸が痛む。
「おてんと様」のぬくもりがない食べ物が増えていることもあるだろう。
 人の心が「おてんと様」から「AI」に移り変わっていくほどに、命あるものが失われていくのは悲しすぎる。
 
「おてんと様にすまないから」といったお婆さんは、目も足も弱くなってもなお、唯一できる仕事であった藁草履作りを、朝から晩までやっていたという。しかも、藁草履など誰もはかなくなってからも、その仕事を止めなかったのだとか。
 お婆さんの最後の「作品」をいただいた白洲さんは、もったいなくて履くこともできず、大切にしまってあったそうだ。
 
 おてんと様は、単なる物質としての太陽ではない。
 血の通った命そのもの。
 ぬくもりである。
 
 おてんと様に見捨てられた人の心は荒んでゆく。
 おてんと様のぬくもりが、もう一度人の心に届きますように。
(180515 第366回)

 

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